ドラマ「Tシャツが乾くまで」で揺れる夫婦の衝撃的な秘密
毎週楽しみに追いかけているドラマで、思わず画面の前で息をのんでしまう瞬間ってありますよね。
物語の中で繰り広げられる夫の突然の失踪と妻の隠された過酷な過去というテーマは、観る者の心を強く揺さぶって離しません。
画面越しに映し出される切ない愛と歪んだ人間関係をじっと見つめながら、もしこんな事態が現実の夫婦間に起きたら一体どうなってしまうのだろうと深く考え込んでしまいました。
特に第9話で明かされた衝撃的な告白の連続は、ネットやファンの間でも大きな波紋を広げています。
今回はこの話題作を法律の視点からじっくりと紐解き、現実の裁判離婚にあてはめた場合にどんな判断が下されるのかを徹底的に紐解いてみようと思います。
Tシャツが乾くまで(ドラマ)咲子がバツ4!離婚理由になる?
■隠していた「バツ4」は離婚原因になる?
主人公の咲子が実は過去に4回の離婚歴があり、それを隠したまま5回目の結婚生活を送っていたという事実は本当に驚きでしたよね。
大好きな夫を失いたくないという一心で言えなかった咲子の繊細な恐怖も理解できますが、突然その事実を知らされた夫の困惑も計り知れません。
それでは現実の法律において、結婚前に過去の離婚歴を黙っていたということは裁判で離婚が認められる原因になるのでしょうか。
日本の民法第770条1項には、裁判で強制的に離婚が認められるための法定離婚原因が定められています。
結論から言うと、単に過去の離婚歴を隠していたという事実だけで直ちに離婚原因として認められる可能性はかなり低いのが現実です。
裁判所が離婚を認めるかどうかを判断する際、過去の経歴の善し悪しではなく、現在の婚姻生活が実際に破綻していて復縁の見込みがないかを重視するからです。
過去に4回離婚していたという事実そのものが、現在の夫婦共同生活を直接壊してしまうわけではないと法律上は考えられるのですね。
ただし、離婚歴を隠していたことに加えて相手を騙す目的で積極的な嘘を吐き続けたり、発覚後の対応が極めて悪質だったりした場合は話が別になります。
たとえば前夫との間に発生している子供の養育費の支払いが発覚して今の家庭の生計を圧迫していたり、過去のトラブルが現在の生活に深刻な影響を及ぼしていたりするケースです。
そうした二次的な被害によって夫婦の信頼関係が完全に崩壊しているならば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚が認められる余地が出てきます。
ちなみに不法行為としての慰謝料請求についても、単に離婚歴を黙っていただけでは認められない傾向が強いと言えます。
過去の裁判例でも、結婚前に自身の病気をはっきり伝えていなかったケースにおいて、裁判所は離婚後の元配偶者からの損害賠償請求を退けました(東京地裁令和4年11月22日判決)。
一方で、婚約後に他の男性の子を身ごもったまま出産したという極めて悪質なケースでは損害賠償責任が認められた判例(甲府地裁昭和55年12月23日判決)もありますが、これは単に過去の離婚歴を言わなかったのとは全く異なります。
なお、結婚前に相手の戸籍を見れば分かったのではないかと思われがちですが、決してそうとは限りません。
離婚した後に本籍地を移したり新しい戸籍を作ったりした場合、過去の結婚や離婚の記録は新しい戸籍には引き継がれない決まりになっているからです(戸籍法施行規則39条1項4号)。
そのため、単に現在の戸籍謄本を取り寄せただけでは過去の離婚歴が記載されていないことも多く、過去の本籍地まで遡って除籍謄本を取らなければ確かめられないのですね。
Tシャツが乾くまで(ドラマ)充の失踪は「悪意の遺棄」になる?
一方で、夫である充が抱えていた失踪癖と、バス事故に乗じて1年間も姿をくらましていたという行動も凄まじい出来事でした。
およそ1年もの間、妻のもとを離れて音信不通になっていたとなると、法律上の「悪意の遺棄」にあたるのではないかと感じるのが自然ですよね。
民法第770条1項2号では、「配偶者から悪意で遺棄されたとき」という離婚原因がしっかりと規定されています。
ここで言われる「悪意」とは、単に事実を知っているという意味ではなく、夫婦の同居・協力・扶助義務を正当な理由なく意図的に放棄し、夫婦生活を壊すことを望む意思を意味します。
しかし実際の裁判実務においては、1年ほどの失踪があったからといって即座に「悪意の遺棄」と認定されるわけではありません。
過去の裁判例でも、妻が無断で家を出て1年6ヶ月あまり行方が分からない状態になった事案で、妻が更年期障害で心身を病んでいた事情などを考慮し、裁判所は悪意の遺棄を認めませんでした(新潟地裁昭和36年4月24日判決)。
単に行方不明であるという結果だけで悪意を推認することは許されないという判断が下されているのです。
劇中の充のように「実家に身を寄せていた」とか「精神的な逃避だった」という事情がある場合、純粋な悪意の遺棄と認定するのはハードルが高いと言えます。
ですが、もし失踪期間中にまったく生活費を送らず完全に家族を見捨てていたのであれば、悪意の遺棄と判定される可能性は格段に高まります。
また、仮に悪意の遺棄とまでは認められなかったとしても、1年間の無断失踪によって夫婦の信頼関係が完全に吹き飛んでしまったのであれば、民法第770条1項5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚が認められる道は十分に開かれています。
Tシャツが乾くまで(ドラマ)「失踪癖」VS「バツ4隠し」
■法的対決:「失踪癖」VS「バツ4隠し」の比較
この二つの重大な秘密を法律の基準で比較してみると、非常に明快なコントラストが見えてきて実に興味深いです。
夫の「1年の失踪」は客観的な事実として同居や協力の義務が途絶えていた期間が存在するため、裁判所で破綻を証明するのがとても容易と言えます。
民法第770条1項2号の悪意の遺棄、または5号の重大な事由として裁判所に認めさせやすい明確な実績があるのですね。
これに対して妻の「バツ4隠し」は信義上の落ち度や感情的な裏切りという側面が強く、現在の結婚生活そのものを直接破壊しているわけではないため、単体では離婚原因として認められにくい欠点があります。
経歴の不開示を理由に離婚を認めてもらうには、家計への打撃や具体的なトラブルといった二次的な被害を証明しなければなりません。
さらに決定的なポイントとして、法律上の「有責配偶者」というルールが存在します。
自ら1年間も失踪して夫婦関係を不安定にさせた充は、法律上まさに離婚の原因を作った有責配偶者にあたります。
最高裁判所の判例(最高裁昭和62年9月2日大法廷判決)でも、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められず、長期の別居や子供の状況など厳しい条件を満たさなければなりません。

同居を再開したばかりの充がこの条件を満たすのは不可能なため、充から咲子へ離婚を求める請求は門前払いされてしまう確率が非常に高いのです。
「バツ4隠し」「失踪癖」離婚理由はどっち?
■結論:より確実に離婚が認められるのは?(民法770条に基づく裁判離婚)
二人の立場を天秤にかけた場合、より確実に裁判離婚が認められるのは圧倒的に妻である咲子からの離婚請求です。
咲子が「1年の失踪癖」と「それに伴う夫婦関係の破壊」を理由に裁判を起こせば、民法第770条1項5号の重大な事由に基づいて離婚が認められる可能性はきわめて高いと言えます。
音信不通で1年間も放置されたという客観的事実は、婚姻関係を修復不可能なほど壊したと判断されるに十分すぎる理由だからです。
反対に充の側から「バツ4を隠されていた」と訴え出ても、裁判所で離婚が認められるのは至難の業です。
過去の経歴隠しそのものが直接の破綻原因とみなされにくいうえに、自分自身が有責配偶者という重いハンデを背負っているからですね。
法律という明確な物差しで見れば、咲子の方が圧倒的に優位な立場に立っていると言えます。
まとめ
作品の中で交錯する歪んだ愛と秘密ですが、現実の法律にあてはめて考えるとそれぞれの重みがくっきりと浮き彫りになって面白いですよね。
お互いに相手を愛し失いたくないと思うがあまり、歪んだ秘密を抱えてしまった二人の不器用な姿には、法律の理屈だけでは測れない人間臭さが詰まっています。
完璧ではない人間同士が傷つけあいながら寄り添う意味を投げかけてくれるからこそ、僕たちの心に深く刺さるのだと感じました。
壊れてしまったフィルターの先で二人がどんな未来をたぐり寄せるのか、最後まで目が離せませんね。
