週末の夕暮れ時にテレビから流れるあの温かいナレーションを聞くと、いつも胸の奥がじんわりと熱くなります。
大好きな「人生の楽園」で紹介された、水の都・島根県松江市を走る人力車「まつ笑」の物語に、私はすっかり心を奪われてしまいました。
今回は、そんな素敵なご夫婦が営む人力車と、彼らが大切に育む隠れ家カフェの魅力を、余すことなくお伝えしたいと思います。
松江の心地よい風を感じながら、まるで自分が人力車の座席に揺られているかのような気分で、ゆっくりと読み進めてみてくださいね。
人生の楽園|島根・松江市 人力車「まつ笑」
■笑顔を乗せて走る夫婦の温もり
松江の美しい城下町を颯爽と駆ける人力車「まつ笑」の大きな魅力は、なんといっても全国的に見ても非常に珍しい夫婦俥夫によるおもてなしです。
夫の司さんが力強く人力車を引き、妻の佳奈美さんがその隣を歩きながら、まるでお殿様やお姫様をエスコートするように優しく街の歴史を案内してくれます。
背中に大きく掲げられた「笑」の一文字には、乗る人も引く人も、そして街ですれ違うすべての人と笑顔を交換したいという、温かい願いが込められているのをご存じでしょうか。
さらにご夫婦のこだわりは、人力車を降りた後にも、居心地のよい素敵な形で続いているのです。
彼らが暮らす自宅を改装してオープンした「かふぇ かなちゃん家」では、料理が得意な佳奈美さんの真心がこもった手作りの家庭料理を味わうことができます。
なかでも独自のブレンドでしっとりふわふわに焼き上げる自家製食パンは、これを目当てに遠方から通う常連さんがいるほどの人気ぶりです。
そのこだわり抜いたパンを丸一日ミルクと卵に漬け込み、弱火でじっくりと時間をかけて焼き上げたフレンチトーストは、まるで極上のプリンのようにぷるぷるとした食感で、口に入れた瞬間に幸せなバターの香りが広がります。
養鶏場から仕入れる新鮮な平飼い卵や地元の契約農家が育てる無農薬野菜を使い、スープの塩麹やドレッシングまで手作りする徹底した姿勢には、元保育士である佳奈美さんの「体にやさしいものを食べてほしい」という温かい眼差しを感じずにはいられません。
さらに、毎月5日、15日、25日の「5の付く日」には、司さんが心を込めて手打ちする本格的なお蕎麦が限定10食で登場し、訪れる人々を二重の驚きと喜びで包み込んでくれます。
靴を脱いで上がるアットホームな畳の空間は、小さなお子様連れのファミリーにとっても、まるで親戚の家に遊びに来たかのように気兼ねなく羽を伸ばせる最高のオアシスです。
島根・松江市 人力車「まつ笑」開業の経緯|人生の楽園
■鉄工所から人力車への転身
この素晴らしいおもてなしの裏側には、胸を打つ挑戦の歴史がありました。
もともと松江で生まれ育った司さんは、高校を卒業してから20年間、地元の鉄工所で一筋に汗を流して家族を支え続けてきた真面目な技術者でした。
しかし、40歳を目前にしたある日、ふと「自分は今の仕事しか知らずに人生を終えていいのだろうか」という漠然とした不安が胸をよぎったのです。
人と直接向き合い、自分の行動で誰かに直接喜んでもらえるような仕事に挑戦したいと一念発起し、長年勤めた安定した会社を退職する決断を下しました。
そんな時に、家族旅行で訪れた宮島での運命的な出会いが、司さんと佳奈美さんの人生の舵を大きく切ることになります。
そこで出会った20歳の女性俥夫が、額に汗を浮かべながらもキラキラと輝く笑顔で人力車を引いており、その姿に子どもたちも夫婦も深く感動したのです。
自分を磨けば磨くほど、お客さんからダイレクトに感謝の言葉が返ってくるこの仕事こそが天職だという彼女の情熱的な言葉は、司さんの心に深く突き刺さりました。
地元に戻った司さんは、さっそく大好きな松江でも人力車に乗ろうと探しましたが、かつて走っていた観光人力車は時代の波に押されてすでに姿を消してしまっていました。
「松江に人力車がないのなら、自分たちの手で復活させよう」
そう決意したご夫婦は、かつて使われていた古い人力車が大切に保管されているという噂を聞きつけ、持ち主のもとへと足を運びました。
松江の観光をもう一度盛り上げたいという熱い想いをぶつけたところ、その熱意に心打たれた持ち主から、人力車を無償で譲り受けるという奇跡が起きたのです。
そこからは経験ゼロからの過酷なスタートで、傷んだ車体を自分たちで修理し、約7か月間にわたって毎日の体力づくりに励みました。
それと同時に、歴史ある松江の魅力を完璧に伝えるため、街の歴史や観光ルートを寝る間も惜しんで猛勉強したのです。
そうして2023年の春、ついに10年ぶりの優雅な車輪の音が、松江の城下町に響き渡ることとなりました。
島根・松江市 人力車「まつ笑」予約・料金は?|人生の楽園
■旅に合わせた柔軟なプラン
「まつ笑」の人力車は、観光客それぞれのスケジュールや旅の目的に合わせて、とても柔軟なプランを用意してくれています。
のんびりと温泉街を散策したい方には、15分で玉造温泉の魅力をさっと巡るコースがおすすめで、お一人なら3,000円、お二人なら5,000円というお手頃な料金で体験できます。
朝の澄み切った川のせせらぎを聞きながら走るのも格別ですし、夜になって街灯が美しくライトアップされたお洒落な温泉街を揺られるのも、ため息が出るほどロマンチックですよ。
しっかりと城下町の歴史を感じたいという本格派には、松江城の大手前を出発してお堀沿いや美しい武家屋敷を45分かけて案内してもらえるコースがぴったりで、お一人なら7,000円、お二人なら9,000円で優雅な非日常を味わえます。
また、もっと自由に行きたい場所を巡りたいという方には、60分間で自由に貸し切ることができる10,000円のプランや、お世話さんが提供する城下散策プランも用意されています。
予約は基本的に前日までの受付となっていますが、ご夫婦のスケジュールや天候によっては当日でも対応してもらえる場合があるので、まずは気軽に問い合わせてみてくださいね。
連絡は公式のInstagramアカウントや直接のお電話で受け付けており、じゃらんなどの旅行予約サイトからもスムーズにネット予約ができるので、旅行の計画を立てる際にも安心です。
少し雨がパラつく日でも、人力車には濡れないための立派な雨よけの屋根がついていますので、足元を気にせず、しっとりとした水の都の表情を快適に楽しむことができます。
島根・松江市 人力車「まつ笑」周辺の観光情報|人生の楽園
■人力車から見上げる名所
自分の足で歩くのとはまったく違う、少し高い座席に腰掛けて流れる景色を見上げると、いつもの観光名所がまるで見違えるような表情を見せてくれます。
まず外せないのは、2025年に国宝指定から10周年という輝かしい節目を迎え、ますます威厳を増した街のシンボルである松江城です。
人力車で城を囲むお堀の周りをのんびりと進みながら、司さんの分かりやすいガイドを聞く時間は、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような心地よさです。
お城の近くにある「塩見縄手」は、当時の武家屋敷がそのまま残る美しい通りで、ハートの形に見える「ハートのくぐり松」という隠れた縁結びのスポットも教えてもらえます。
小泉八雲が毎日のように歩き、怪談のインスピレーションを得たとされる、静かで厳かな「城山稲荷神社」の参道も、人力車の厳かな雰囲気とこの上なくマッチします。
さらに、かつて迎賓館として建てられた興雲閣から移設されたロマンチックなピンクのポストがある「カラコロ工房」も見逃せません。
リニューアルを経てさらにおしゃれになった体験型施設で、ポストと一緒に写真を撮ると、幸運が舞い込むと言われているんですよ。
京都の情緒を模して作られたという情緒溢れる「京店商店街」の石畳には、こっそりとハートが描かれた特別な石が隠されており、人力車から見下ろしながらそれを探すのも、遊び心があって本当に楽しい時間になります。
まとめ
■心温まる物語の始まりへ
歩ける広さの城下町を、あえて人力車の速度で巡るということには、目的地へ早く着くこと以上の贅沢な意味が隠されています。
目線の高さを少しだけ変え、歩くよりもゆったりとしたスピードで進むからこそ、今まで見落としていた美しいディテールや、古き良き街の息遣いが心に優しく染み込んできます。
吉川さんご夫婦が何もないところから情熱だけで復活させた「まつ笑」は、単なる移動手段ではなく、人と街、精度高く人と人を結び直す、温かい魔法の乗り物でした。
私も松江を訪れた際には、絶対に彼らの人力車に乗って、あのぷるぷるのフレンチトーストを頬張り、極上の幸せに浸るプランを実行しようと心に決めています。
みなさんも、この週末は日常の忙しさを少しだけ忘れて、水の都を走るおしどり夫婦の温かい笑顔に会いに、島根へと旅立ってみてはいかがでしょうか。
