テレビの画面越しに、思わずごくりと唾を飲み込んでしまった方も多いのではないでしょうか。
先日放送された『プラチナファミリー』で、小泉孝太郎さんが訪れていたあの日本最古の飲食店、気になりますよね。
京都の静かな社に佇み、炭火で香ばしく炙られるお餅の匂いが、こちらまで漂ってきそうなほどの臨場感でした。
なんとそのお餅、賞味期限はわずか3時間というから驚きです。
今回は、そんな歴史のロマンが詰まった「一文字屋和輔」の魅力を、どこよりも詳しく掘り下げてお届けします。
読み終える頃には、きっと京都行きの切符を手配したくなっているはずですよ。
一文字屋和輔(創業千年以上の日本最古の飲食店)歴史【プラチナファミリー】
■平安時代から続く奇跡の歩み
一文字屋和輔、通称「一和」の歴史は、今から遡ること1000年以上、西暦1000年の平安時代にまで始まります。
一条天皇が都を襲った恐ろしい疫病を鎮めるために今宮神社を建てた際、初代が参拝者にお餅を振る舞ったのがすべての始まりでした。
当時は、神社にお供えされた神聖な丸餅と、神事で使われた竹の「おさがり」を分けてもらい、小さくちぎって炭火で炙ったのだそうです。
想像してみてください、今から千年前に暮らしていた人々が、無病息災を祈りながら私たちと同じようにお餅を頬張っていた姿を。
歴史の荒波は凄まじく、室町時代にはあの京都を灰燼に帰した応仁の乱が起こりました。
それでも、奇跡的に戦火を免れた一和は、傷つき飢えた近隣の人々にあぶり餅を惜しみなく振る舞い、多くの命を救ったと言い伝えられています。
かの有名な茶人、千利休も大徳寺での茶会の席で、このお餅を茶菓子として重宝したのだから、その格調の高さは本物です。
戦国時代には、天下人となった豊臣秀吉も今宮神社に参拝した際に、このあぶり餅を味わったという記録が残されています。
店内に今も水を湛える「まいまい井戸」は平安時代から一度も枯れることなく湧き続けており、まさに生きた歴史の証人と言えます。
一文字屋和輔(創業千年以上の日本最古の飲食店)現在は何代目?
■記録が紡ぐ25代の絆
この驚異的な老舗、現在は何代目なのかというと、明確な記録が残る範囲で「25代目」とされています。
1000年以上の歴史で25代というのは数字が少ないように感じられますが、これは古文書などで確実に確認できる代数が25代前まで遡れるからなのです。
それ以前の長い歳月も、途切れることなく代々その暖簾が守られてきた事実は変わりません。
一和の最もユニークで温かい伝統は、代々「女性」の手によって技術と味が守られてきた点にあります。
今でもお店の顔として暖簾を掲げ、毎日笑顔で店を切り盛りしているのは、25代目の女将である長谷川奈生さんです。
実は、この家では「男は外に働きに出て、女が家を守る」という役割分担が脈々と受け継がれてきました。
現在の当主である奈生さんのお兄さんも会社勤めをしており、一和のあぶり餅は「生活費を稼ぐための商売」ではなく、あくまで「今宮神社へのご奉仕」として続けられてきたのです。
利益や成長を追い求めるのではなく、ただ神様と参拝者のために細く長く続けていくという謙虚な姿勢こそが、1000年以上も暖簾を守り抜けた最大の秘訣なのでしょう。
私も仕事で壁にぶつかったとき、この一和の生き方を思い出すと、本当に大切なものは何なのかを深く考えさせられます。
一文字屋和輔(創業千年以上の日本最古の飲食店)の「あぶり餅」とは?
■わずか3時間の贅沢な名物
一和のメニュー表を開いても、迷う必要は一切ありません。
なぜなら、用意されているのは創業当時から一筋に守り抜かれてきた「あぶり餅」ただ一品だけだからです。
温かいお茶が付いて1人前600円という価格は、これだけの歴史を味わえる体験としてはあまりにも破格だと思いませんか。
つきたてのもち米100%のお餅を小さくちぎり、丁寧にきな粉をまぶして、特製の竹串に刺して炭火でじっくりと炙ります。
ぷーっとお餅が膨らんでいき、こんがりと美味しそうな焼き色がついたら、秘伝の白味噌ダレをたっぷりと絡めて、熱々のうちにお皿に盛られます。
お皿の上に綺麗に並ぶあぶり餅の数は、中途半端に思える「11本」です。
実はこれ、平安時代の陰陽道で「奇数は縁起が良い陽の数字」とされていたことにこだわった、粋な計らいなのです。
ひと口食べると、備長炭の香ばしい焦げ目のほろ苦さと、西京白味噌の上品な甘じょっぱさが口いっぱいに広がり、言葉を失うほどの感動を覚えます。
保存料や防腐剤といった余計な添加物は一切使われておらず、もち米ときな粉、お砂糖、白味噌だけで作られるオーガニックな優しさも魅力です。
だからこそ、賞味期限は「本日限り」であり、お持ち帰りしたとしても、3時間も経てば本物のお餅ゆえに硬くなってしまいます。
お取り寄せや通販は一切行っておらず、現地に行かなければ絶対に食べられない、究極の贅沢と言えるでしょう。
一文字屋和輔(創業千年以上の日本最古の飲食店)の場所・アクセス
■今宮神社の門前で出会う風情
一和を訪れるなら、京都の北区に位置する今宮神社の東門を目指してください。
東門を一歩出ると、参道を挟んで向かい合うようにして、昭和や大正の時代劇に迷い込んだかのような二軒の古い茶屋が姿を現します。
その北側に佇む、美しい木造建築が「一文字屋和輔」です。
住所は京都府京都市北区紫野今宮町69で、営業時間は朝の10時から夕方の17時までとなっています。
毎週水曜日が定休日ですが、毎月1日と15日、そして祝日や神社の祭礼日と重なる日は水曜日でも営業し、翌日がお休みになります。
気になるアクセス方法ですが、JR京都駅から市バス206系統に乗り、「船岡山」バス停で下車して徒歩約7分ほどで到着します。
地下鉄烏丸線の「北大路駅」から、大徳寺の緑豊かな境内をのんびりと20分ほど散策しながら歩くルートも、京都の空気感を肌で感じられて非常におすすめです。
予約は受け付けておらず、混雑時には行列ができることもありますが、席の回転が非常に早いため、それほど長く待つ心配はありません。
お支払いは現金のみとなっていますので、小銭を少し多めに用意していくとスマートにお会計ができて安心ですよ。
ちなみに、向かい合うもう一軒の老舗「かざりや」も400年以上の歴史を誇る名店で、お腹に余裕があれば贅沢に食べ比べてみるのも大人の旅の醍醐味ですね。
まとめ
■千年の味を求めて
テレビの中で小泉孝太郎さんが美味しそうにあぶり餅を頬張る姿を見て、歴史の重みと人の温もりに深く胸を打たれました。
一和のあぶり餅は、単なる美味しいスイーツという枠を超えて、災いから人々を守りたいと願う優しい祈りが形になった「食べるお守り」そのものです。
移り変わりの激しい現代社会だからこそ、1000年間変わらない場所で、変わらない製法で作られ続ける素朴な味が、私たちの心に深く染み渡るのかもしれません。
次の週末は、忙しい日常から少しだけ離れて、今宮神社の心地よい風を感じながら、千年の味わいに会いにいってみませんか。
きっと、お腹も心もこれまでにない優しさで満たされる、特別な旅になるはずです。
