毎週火曜日の夜、テレビの前で息をのむような緊迫感に包まれるあの時間が、今週もやってきましたね。
第9話を終えた今、僕の胸には、言葉にならないほどの熱い感情と、どこか救われたような静かな涙が残り続けています。
人は、自分が引き起こしてしまったと感じる「後悔」から、一生逃れることはできないのでしょうか。
今回は、いつも飄々としていて何を考えているか分からなかった鴨居刑事の、あまりにも痛ましく、そしてあまりにも美しい魂の再生が描かれました。
この記事では、ドラマ「さよならノワール」第9話を、僕の個人的な熱い想いとともに、一歩踏み込んで語り尽くしていきたいと思います。
さよならノワール(ドラマ)9話までの振り返り
■心に刻まれた傷跡と、嘘の終わりが告げられた前回のあらすじ
まずは、この第9話の底流に流れる緊迫感を作り出した、前回の物語を少し振り返ってみましょう。
前回の主役は、襲撃事件の被害者となった元衆議院議員の滝本祐子でした。
彼女は、自分が過去に指定暴力団「祥仁會」を自ら頼り、その不適切な関係を秘書の畑中に押しつけて嘘をつき続けていたという、重い過去を抱えていました。
しかし、黒木夏海たちの、登壇を強制しない、逃げることも含めて本人の意思を尊重する温かく人間味あふれる支援に触れ、彼女はついに真実を語る決断をしました。
嘘で塗り固められた政治家としての地位を失うリスクを背負いながらも、真実を公表した彼女の姿は、私たちの心に深く刺さりました。
そして、そのラストシーンで、白石絵梨子に誘われて講習会へ現れた鴨居が、五十畑教授と対面した瞬間に見せたあの凍りつくような表情を、皆さんも覚えているはずです。
あの数秒間の沈黙に秘められた、誰も踏み込めなかった過去の扉が、ついに今夜、開かれることになりました。
さよならノワール(ドラマ)9話あらすじ
■誘拐事件の発生と、20年前に止まったある青年の時計
西池袋署の管轄外である新宿中央署の管内で、9歳の少女が何者かに連れ去られるという、最悪の事件が発生したところから第9話は動き出します。
少女は自力で犯人の元から逃げ出して無事に保護されましたが、犯人は依然として行方をくらましたままでした。
この事件の知らせを聞いた瞬間から、鴨居の様子はいつもと全く違っていました。
管轄外であるにもかかわらず、鴨居は無断で勝手に聞き込みを始め、新宿中央署の捜査一課へ自分も応援に加えてほしいと直談判まで行います。
周囲から冷たく門前払いされても、怒りを必死に押し殺し、異様なまでの執念で犯人を追おうとする鴨居。
彼をここまで突き動かしていたのは、実は自分自身の身を裂かれるような過去の傷でした。
今回、指名手配された誘拐犯の熊沢学は、20年前にも同様の少女誘拐事件を起こしていたのです。
And then, その20年前の事件で自力で逃げ出そうとして転落死してしまった当時8歳の少女・立花晶子こそが、鴨居の実の妹でした。
当時18歳だった犯人は、少年法によって手厚く保護され、実名も報道されず、社会復帰を果たしていました。
その一方で、被害者遺族である鴨居の家族には容赦ない報道の嵐が押し寄せ、精神的に追い詰められた両親は事件の影響から相次いで病死してしまいます。
鴨居は、残された親戚の養子となり、名字を変えて、自分の感情を鎧の中に閉じ込めて生きていくことになったのです。
さよならノワール(ドラマ)9話ネタバレ
■闇の中での直接対峙、そして13歳の少年に届いた優しい言葉
無断で捜査を続ける鴨居を心配した夏海と絵梨子は、彼がどこへ向かったのかを必死に捜索し始めます。
鴨居のデスクの引き出しには、彼が執念で集めた熊沢に関する捜査資料が残されていました。
絵梨子は、かつて熊沢をヤングケアラーとして擁護する意見書を書き、その後に後悔して被害者支援に転向した五十畑教授から、熊沢の祖父の家が空き家になっているという情報を聞き出します。
鴨居の心が20年前から1ミリも動いていないことを見抜いた絵梨子たちは、その空き家へと急ぎました。
空き家の薄暗い部屋で、鴨居はついに、妹を奪った犯人である熊沢と対面します。
「晶子を殺す気はなかったのか、妹が欲しかったなんて嘘だろ」と、静かながらも震える怒りで問い詰める鴨居。
熊沢は一度は寂しかったからと土下座をして見せますが、次の瞬間には不気味に笑い出し、すべては弁護士に言われた通りの嘘だったと吐き捨てます。
晶子が勝手に逃げ出して死んだのだとあざ笑い、鴨居に襲いかかる熊沢。
鴨居が怒りのあまり一線を超えてしまうのではないかと、見ている僕たちも心臓が止まりそうになるほどの修羅場でした。
しかし、鴨居は決して復讐の刃を振り下ろすことはせず、駆けつけた新宿中央署の刑事たちによって熊沢は逮捕されました。
事件が法的に解決した後、張り詰めていた糸が切れた鴨居の元へ、絵梨子が静かに歩み寄ります。
絵梨子は、決して「気持ちが分かる」などという傲慢な言葉は使わず、「私には分かりません。でも、晶子ちゃんの思い出を聞かせてほしい」と語りかけました。
そこで鴨居の口から漏れ出たのは、20年間、誰にも言えずに自分の心の奥底で血を流し続けていた本音でした。
あの日、母親から妹のピアノ教室への迎えを頼まれていたのに、部活の練習が長引いて遅れてしまったこと。
自分がもっと早く迎えに行っていれば、妹は死なずに済んだという、終わりのない自責の念。
「両親が僕を一度も責めなかった。だからこそ、逃げ場がなくて、自分を責め続けるししかたがなかった」と、震える声で語る鴨居の姿に、胸が締め付けられました。
そんな彼に対して、絵梨子が静かに放った言葉が、鴨居の止めていた20年の時間を一気に動かします。
「鴨居さんは20年間、ずっと晶子ちゃんを思い続けてきました。鴨居さんは、たぶん、いいお兄ちゃんです」
完璧な綺麗事ではない、少しだけ不器用な「たぶん」という言葉が、13歳で取り残されていた少年の凍りついた心を、優しく抱きしめました。
鴨居は静かに涙を流し、絵梨子はその背中にそっと手を当てて、その痛みを一緒に背負ったのです。
さよならノワール(ドラマ)9話の感想
■岡山天音という希代の役者が魅せた、魂を震わせる名演への感想
今回の第9話は、何よりも鴨居卓海を演じた岡山天音さんの「間の演技」が、信じられないほどの輝きを放っていました。
言葉を飲み込むときの口元の歪みや、絶望を湛えた瞳の揺らぎなど、台詞がない瞬間にこそ、彼の20年分の重みがすべて宿っていました。
犯人の熊沢が放ったあまりにも身勝手な嘲笑を前にして、復讐という暗闇に落ちてしまいそうになりながらも、踏みとどまった彼の葛藤には涙が止まりませんでした。
また、北香那さん演じる絵梨子の成長にも、心の底から感動させられました。
以前の彼女なら、心理学の理論を並べて正しい答えを急いで押しつけていたかもしれません。
しかし今回、彼女は「分からない」と認めること、ただそばにいて相手の言葉を待つという、本当の意味での寄り添いを見せてくれました。
「いいお兄ちゃんです」という、直接的ではない、けれど鴨居のこれまでの人生を丸ごと肯定する言葉は、今期最高のパワーワードだったと思います。
忘れてはいけないのが、謹慎処分を受けた鴨居に対し、中谷刑事がかけた「長かったな……」という一言です。
刑事課の仲間たちも、彼が犯罪被害者遺族であることを知りながら、決して特別扱いするのではなく、ただ彼の20年の旅路を労うような温かい距離感で受け入れました。
このドラマが描く「事件が終わった後の、傷を抱えたまま生きていくことの難しさと尊さ」が、最も美しい形で結晶化した回だと確信しています。
まとめ
■傷跡を抱えたまま明日を生きる、これからの希望に向けたまとめ
私たちは、何か大きな失敗や、取り返しのつかない過去を経験すると、もう二度とやり直せないのではないかと思ってしまいます。
でも、夏海が鴨居に伝えた「吹っ切らなくていい」という言葉のように、傷を消し去る必要なんてないんですよね。
その消えない痛みを抱えたままでいいから、明日という一日を自分の意思で選び直していくこと。
それこそが、このドラマが一貫して僕たちに届けてくれている「再生」のメッセージです。
魂の決着をつけた鴨居は、2週間の謹慎を経て、きっと今まで以上に被害者の痛みに本当に共感できる素晴らしい刑事へと成長していくはずです。
そして、彼の姿を見た黒木夏海もまた、自分の過去から逃げずに向き合う覚悟を決めました。
「私も決着をつける。もう忘れたふりはしない」
かつて自分を呼び出し、待ち合わせ場所に現れないまま失踪した上司・山崎の行方を追って、夏海はついに祥仁會が絡む横浜の闇カジノへと足を踏み入れます。
次回の第10話では、カジノの内通者である紗耶香の保護を巡り、捜査を優先する河口刑事との激しい衝突や、山崎生存の真相に近づく息もつかせぬ展開が待ち受けています。
傷を抱えたはぐれものたちが、それぞれどのような結末へと向かっていくのか、最後まで僕たちも彼らの歩みを見守り続けていきましょう。
