いやぁ、皆さん『ズートピア2』はもう観ましたか?
興行収入がとんでもないことになっていますが、僕も例外なく3回観ましたよ!
前作のテーマをさらに深く掘り下げた、まさに「傑作の続編」でしたよね。
特に今回、ファンの間で最も熱い議論を呼んでいるのが、予測可能ながらも心に深く刺さる悪役、パウバート(Pawbert)です。
一見、頼りなさそうなオオヤマネコの彼が、なぜあんな行動に出たのか、そして彼が背負っていた「悲劇」とは何だったのか。
Google検索でここにたどり着いた皆さんは、きっと彼の複雑な内面に興味を持っているはず。
今回は、僕が持てる考察のすべてを注ぎ込み、パウバート・リンクスリーというキャラクターを徹底的に掘り下げていきます。
一緒にこの「哀しき悪役」の沼にハマりましょう!
映画ズートピア2ネタバレ解説|悪役パウバートとは?
■ヤマネコの御曹司:基本情報
パウバート・リンクスリーは、ズートピアの歴史と深く関わるリンクスリー家の末っ子として登場します。
彼の種族はカナダオオヤマネコ(Canada lynx)で、捕食者カテゴリに属しています。
名門リンクスリー家はズートピアの創設者エベネザー・リンクスリーの子孫であり、「ウェザー・ウォール」の発明者として街で絶大な権力を握る超富裕層です。
しかし、パウバートはその家族の中で、なぜか「落ちこぼれ」「失望の象徴」として扱われているんです。
仕事も、父親から命じられて郵便室で低賃金労働を強いられるなど、家族内での立場は非常に低いものでした。
フルネームの「パウバート(Pawbert)」は、ロバート(Robert)という名前と猫科動物の「足(Paw)」をかけた、ユーモアのあるネーミングだと言われています。
こんなバックグラウンドを持つ彼が、物語のキーパーソンであるヘビのゲイリー・デ・スネークの密輸を手引きし、事件のきっかけを作った張本人なんですね。
外見と繊細なデザイン
パウバートは、ライトグレーの毛皮に白い口元、そして黒い模様を持つカナダオオヤマネコとして描かれています。
特徴的なのは、耳の先の黒い房毛と、口元に3本ずつ生えた波状のひげです。
彼は普段、ダークグリーンのセーターとブラウンのトラウザーという、上流階級らしからぬ、どこか地味で親しみやすい服装をしています。
この服装は、豪華絢爛な兄姉や父ミルトンと対比され、「冴えない末っ子」という彼の立場を強調しているように感じました。
そして、彼の目の色。最初はアンバーまたはライトグリーンと表現されますが、裏切りの瞬間、その瞳がギラつき、笑いが不気味に歪む描写は本当に恐ろしい。
彼のアニメーションは、序盤の社交的な不器用さ(肩をすくめる、手をこする)から、本性を現した後のソシオパス的な冷酷さまで、感情の振れ幅を視覚的に表現していて、ディズニーの技術の進化を感じさせます。
映画ズートピア2ネタバレ解説|悪役パウバートの性格・価値観
■悲劇的な裏の顔と心理
パウバートを単なる悪役として片付けられないのは、彼の心理的背景が深く描かれているからです。
彼の行動原理の核は、「家族からの承認欲求」、これに尽きます。
彼は裕福な家族の中で育ちながらも、常に「落第者」「期待外れ」として見下され、劣等感を抱えてきました。
そのため、彼は「自分は家族と同じように価値がある存在だ」と証明することに、人生のすべてを賭けていたんです。
その焦燥感と自己肯定感の低さが、彼を操作的で無慈悲な日和見主義者へと変貌させました。
特にゾッとするのが、ジュディの「あなたは家族と違って、良い道を選べる」という説得に対して、彼が放った一言。
「私は、違う存在になりたくない」。
このセリフに、僕らは彼の悲劇のすべてを見た気がします。
彼は、虐待的な環境から抜け出すのではなく、その環境の一部になることを望み、「家族の一員である特権」を守るために、いかなる悪事も正当化してしまったんです。
彼が体現するのは、前作のベルウェザーのような「弱者が抱く復讐心」ではなく、「既得権益にしがみつく者の自己保身と弱さ」であり、これが現代社会の闇を象徴しているようで、本当に背筋が凍りました。
映画ズートピア2ネタバレ解説|悪役パウバートのストーリー立ち回り
■ストーリーでの衝撃的な役割
パウバートは、物語の最初から最後まで、ジュディとニックの捜査に深く関わりますが、その役割は「味方のフリをした最大の脅威」です。
彼はまず、ヘビのゲイリーがズートピアに来るきっかけとなる手紙を受け取り、彼と協力関係を結びました。
表向きは「家族の悪事を暴きたい」とジュディやゲイリーに同調し、彼らの信頼を得て行動を共にします。
しかし、彼が本当に欲しかったのは、ゲイリーの曾祖母アグネスが残した「ウェザー・ウォール」の真の特許証の隠し場所でした。
そしてついに真の特許証の場所が判明した瞬間、彼は本性を露わにします。
彼は蛇の毒が入った注射器でジュディの首を刺し、動けなくし、変温動物であるゲイリーを冷たい雪の中に突き落として見捨てました。
彼の目的は、その特許証を焼き払い、歴史を永久に隠蔽することで、父親ミルトンに「真のリンクスリー家の一員」だと認められることだったのです。
クライマックスでは、雪の迷路でニックと壮絶な戦いを繰り広げますが、ここで見せる彼の執念は凄まじいものがあります。
最終的に彼は、アグネスの旧宅で特許証を燃やそうとマニアックに笑っているところを、駆けつけたホグボトム警部にフライパンで頭を殴られて気絶し、逮捕されました。
この裏切りは、前作のベルウェザーよりもさらに陰湿で個人的なものとして描かれ、ジュディの心に深い傷を残したことでしょう。
映画ズートピア2ネタバレ解説|悪役パウバートの相関図
■複雑な相関図:家族と獲物
パウバートの人間関係(動物関係?)は、彼の自己肯定感の低さと承認欲求を中心に展開しています.
彼の周囲は、彼を突き動かす「毒」と、彼が利用しようとした「獲物」で構成されていました。
【家族:毒の源】
- ミルトン・リンクスリー(父): 厳格な当主で、パウバートを露骨に冷遇し、虐待的な態度を取る張本人です。パウバートは彼の承認を得るためだけに暴走しました。
- キャトリック・リンクスリー(兄) / キティ・リンクスリー(姉): 彼らはパウバートを馬鹿にするいじめっ子的な存在です。
【敵・被害者:利用した獲物】
- ジュディ・ホップス: 捜査の「同志」を装い、最終的に毒を注射した裏切り相手です。彼はジュディをダークミラーとして見ており、同じアウトサイダーでありながら、全く違う道を選んだことが対比されます。
- ニック・ワイルド: パウバートにとって、ジュディを奪おうとする「汚いキツネ(dirtbag fox)」であり、殺害対象でした。
- ゲイリー・デ・スネーク: 彼の先祖の特許がパウバートの目的であり、ゲイリーは単なる情報源として利用されました。ちなみにパウバートは、協力関係にあったにも関わらず、ゲイリーを名前で呼ばず「ヘビ」と呼び続けていたことが、彼の冷酷な本性を暗示する伏線だったという考察もあります。
逮捕された後も、エンドロールでは家族揃って牢屋に入れられているものの、相変わらず父親ミルトンに「失望だ」と拒絶される描写があり、最後まで報われない悲劇的な結末を迎えています。
映画ズートピア2ネタバレ解説|悪役パウバート声優は?
■ヤマダリティが光る:声優情報
パウバート役のキャスティングは、日米ともに素晴らしいものでした。
英語版でパウバートの声を担当したのは、アメリカのコメディアン、俳優、ミュージシャンであるアンディ・サムバーグ(Andy Samberg)です。
彼は『ブルックリン・ナイン-ナイン』のジェイク・ペラルタ役などで知られていますが、今回のパウバート役は、彼のコミカルでどこかナーバスな演技力が、「社交的だが本性は狂気的」というパウバートの複雑なキャラクターに見事にハマっていました。
特に、裏切り後も完全に威圧的な悪役になりきれない、「動揺したまま殺人行為に及ぶ」という新種の不気味さが、サムバーグの演技によって際立っていたと感じています。
そして、日本版の吹き替え声優を務めたのは、Hey! Say! JUMPの山田涼介さんです。
山田さんがディズニー作品のキャラクターの声を担当するのはこれが初となります。
ズートピア創設者一族の御曹司という役柄にふさわしい、優しさと品位を感じさせる声質でありながら、後半で見せた狂気に満ちた叫びとのギャップが、多くの観客の心を掴みました。
彼の演技が、パウバートの持つ「落ちこぼれのコンプレックス」と「家族への切望」という二面性を、非常に繊細に表現していたのは、さすがとしか言いようがありません。
映画ズートピア2ネタバレ解説|悪役パウバートのトリビア
■悪役としての評価とトリビア
パウバートは、前作の黒幕ドーン・ベルウェザーと比較され、「ツイストヴィランとして完全なアップグレード」を果たしたと高く評価されています.
ベルウェザーは悪役と判明した瞬間に性格が豹変し、ヴィランとしての登場時間が短かったのに対し、パウバートは20分以上にわたりヒーローたちを脅かし、最後までその神経質な本質を失いませんでした。
彼の動機が「虐待的な家族からの承認」という、より個人的で共感を呼ぶ悲哀に基づいている点も、ベルウェザーの「権力欲」よりも深みがあると言えるでしょう.
【トリビアと裏話】
- 『シャイニング』へのオマージュ: 終盤、パウバートが雪のヘッジ迷路に入るシーンは、ホラー映画の金字塔『シャイニング』のオマージュです. 緑のセーターを着て、足を引きずりながら、狂気の視線(クーブリック・ステア)でニックを追う姿は、ジャック・トランスそのもので、ディズニーがこんなブラックなパロディを仕込むなんて、最高に攻めてるなと思いました。
- ニックとの対比: パウバートは、差別や偏見によってアウトサイダーとなったニックの「もしもの姿」、つまり、「個人としての尊厳を失い、悪に染まったキツネ(捕食者)」の暗い写し鏡として設計されています。彼がニックに「命をかける価値なんてない」と言い放つシーンは、かつてニックがジュディに言った言葉を意図的にエコーさせているんです。
- エンドロール後の読書: 逮捕された後、彼は牢屋の中で『パートナーシップ for Dummies(超初心者向けパートナーシップ)』という本を読んでいる描写があります。これは、彼が最後まで家族や仲間との「正しい繋がり方」を切望していたこと、そしてそれが叶わなかったという悲哀を象徴しています。
まとめ
■承認欲求が生んだダークヒーロー
パウバート・リンクスリーは、ズートピアという理想郷の歴史的汚点と、上流階級の構造的な欺瞞を体現する、非常に現代的な悪役でした。
彼の裏切りは衝撃的でしたが、その動機が「家族に認められたい」というあまりにも人間的(動物的?)な弱さから生まれたものだと知ると、憎みきれない複雑な感情が湧いてきます。
彼の存在があったからこそ、ニックとジュディの「命を懸けて守りたい絆」がより一層輝き、真のバディとしての関係性が確立されたと言えるでしょう。
パウバートは、結局は家族の愛という「世界で一番欲しかったもの」を手に入れることはできませんでしたが、彼が突きつけた「あなたは違う存在になりたくない」という問いかけは、私たち自身の所属意識や自己肯定感について深く考えさせる、最高のスパイスだったと思います。
彼の熱演、そして複雑な背景を何度も噛みしめるためにも、ぜひ劇場で彼の「シャイニング」オマージュシーンを再確認してみてくださいね!
僕からは以上です!
