巷で話題の「伊る」「佐う」という謎の動詞を調べている皆さん、ようこそディープなネットの沼へ。
検索しても辞書には載っていないし、一体どういう意味なのか頭を抱えていませんか。
僕も最初、これらの漢字を見たときは「まさかこんな言葉、本当にあったのか？」と混乱しました。
だって、存在しないはずの言葉を、誰もが知っている前提で使っているのがネットの恐ろしいところですからね。
今日は、この難読漢字スラングが持つ二重の意味、そしてその背景にあるSCP財団と、ネットコミュニティの深い歴史を、熱量高めに徹底的に掘り下げていきます。
この記事を読めば、あなたも今日から「伊る」「佐う」を完璧に使いこなせるようになりますよ。
伊る、佐うwiki｜意味・読み方は？
まず、あなたが最も知りたいであろう、この二つの動詞の現代ネットスラングとしての意味と読み方から解説しましょう。
「伊る」の意味と読み方：しぶとく居座る
「伊る」の読み方はシンプルで「いる」です。
しかし、その意味は一般的な「居る」とは全く異なります。
現代ネットスラングにおける「伊る」の主な意味は、「（その場に）いる」「存在する」「居座る」というニュアンスなのですが、これに極めて強い嫌悪感や嘲笑が込められています。
つまり、「消えてほしいのに、しぶとく生き残っている」「居座って邪魔」という否定的な感情を込めた「いる」なんです。
この一文字に込められた「お前まだいるのかよ」という冷たい視線が、たまらなくネットらしい表現だと僕は感じます。
「佐う」の意味と読み方：愚かな援護
次に「佐う」ですが、読み方は「さう」と読みます。
これは「さ・う」と区切るのではなく、一語の動詞として「さう」なんです。
意味は「（誰かの味方を）する」「助ける」「援護する」を指すのですが、これも「伊る」と同様に皮肉や嘲笑を込めた表現として使われます。
ほぼ100%、「愚かな味方」「盲目的な信者」「火に油を注ぐような援護」という、非常に否定的な文脈でしか使われないのが特徴です。
誰かを助けているはずなのに、結果的に滑稽に見える、あるいは状況を悪化させている状態を指す、辛辣極まりない言葉ですね。
伊る、佐う｜由来・元ネタは？SCP-161-JP（SCP財団）？
さて、この奇妙な二つの動詞がどこから生まれたのか、その起源を探ると、二つの全く異なる文化が交差していることがわかります。
一つは創作界隈、もう一つは匿名掲示板文化です。
起源1: 架空の病「SCP-161-JP」の存在しない概念
実は「伊る」と「佐う」という言葉が一般のネットユーザーに混乱と興味をもたらす最大の要因は、創作コミュニティ「SCP Foundation」にあるんです。
SCP財団とは、世の中の異常な存在（オブジェクト）を確保・収容・保護する架空の組織を舞台にした、シェアワールド創作サイトのことですね。
この財団の日本支部で生まれたオブジェクトの一つに「SCP-161-JP – 伊れない病」があります。
この病気は、「伊る」という動作や概念に対する認識を過去にさかのぼって失わせてしまうという精神疾患なんです。
SCP財団の世界観では、「伊る」はバレリーナが片足立ちで回る動作や、能楽師が扇を持ち舞台を歩く動作など、誰でも知っている重要な動作として登場します。
この異常性の恐ろしいところは、「伊る」の読み方を教えようとしても、それを認識した数時間前の記憶が失われてしまう点です。
そしてこの報告書の最後に、「伊る」だけでなく「眠る」や「食べる」、そして「佐う」といった重要な概念がもし認識できなくなったら、甚大な被害が出ると警告されています。
ここで読者が「佐うって何だ？」「『眠る』や『食べる』と並ぶほど重要な概念を自分は忘れているのか？」と混乱に陥るわけです。
結論から言うと、このSCP報告書内で使われる「伊る」や「佐う」は、我々の現実に存在する言葉ではありません。
つまり、読者に「もしかして自分だけがこの概念を知らない病気にかかっているのでは？」という危機感を与える、メタ的な仕掛けとして機能しているのです。
僕も初めて読んだとき、存在しないはずの「佐う」という文字列を何度も見て、本当に混乱しました。
この「第四の壁」を超えて読者を巻き込む手法が、本当に秀逸でクリエイティブな発想だと心から思いますね。
ちなみに、このSCPの文脈では「伊る」の正しい読み方は明かされていません。
起源2: 匿名掲示板発の難読漢字遊び
SCP財団での「伊る」「佐う」は架空の概念ですが、ネットスラングとして定着した「伊る（いる）」「佐う（さう）」の系譜は、また別のアングラな場所から生まれています。
スラングとしての「伊る」は、2013年から2014年頃に、2ちゃんねる（現5ch）のニュース速報(VIP)板で誕生しました。
当時のVIPPERが、ごく一般的な動詞「いる」をわざと難読漢字に変換して遊んでいたのが始まりで、その中で「伊る」が定着したんです。
数ある「い」と読む漢字の中で「伊」が選ばれたのは、国名（伊太利亜）にも使われ一際浮いて見え、最も難読感があったからだと言われています。
この難読漢字の悪ふざけが、2018年頃からVTuber界隈のアンチスレなどで爆発的に使われ始め、市民権を得ていきました。
一方「佐う」は、やや遅れて2019年末から2020年初頭にVIP板やふたば☆ちゃんねるで登場しました。
これは、当時大炎上していた特定のVTuberの熱狂的な信者が「助ける」という言葉を連投していたのを嘲笑するため、「佐う」に変換して皮肉を込めたのがきっかけとされています。
「佐」という漢字は「輔佐（ほさ）」や「佐官」のように、「助ける」という意味合いを持つため、「助ける」を「佐う」に置き換えることで、異様に見える上に皮肉が効くという理由で広まりました。
この二つの言葉は、ほぼ同時期、同じコミュニティ（匿名掲示板）で生まれ、文法構造がパラレルであったため、SNS時代に入ってからセットで使われるのが定番となりました。
伊る、佐う｜使い方・使用例
■SNSでのリアルな使い方と例文
「伊る」「佐う」は、現在（2025年12月時点）ではVTuber界隈を飛び出し、X（旧Twitter）や各種匿名掲示板で完全に一般化した日常語として使われています。
ただし、繰り返しになりますが、これらは嘲笑や嫌悪、皮肉を込めるために使う言葉なので、使用する場面には細心の注意が必要です。
「伊る」の使用例
意味: しぶとく居座る、消えてほしいのに存在する
- 「あの政治家、またスキャンダルなのにまだ伊るのかよ。早く辞めてくれ」
- 「このクソゲー、ユーザーは減ったのにサーバーだけは妙にしぶとく伊ってるな」
- 「会議に伊るだけで、何も発言しない上司マジで勘弁してほしい」
- 「〇〇（嫌いなアカウント名）がXに伊るだけでTLが汚染されるんだが」
特に長時間配信している配信者に対して「12時間伊てるぞこいつ」などと使われたことで、VTuber界隈での定着が進みました。
「佐う」の使用例
意味: 愚かにも味方をする、火に油を注ぐ援護をする
- 「あの炎上案件、信者が必死に佐ってるせいで逆に燃え広がってるじゃん」
- 「テレビはいつまで政権に佐って、見て見ぬふりをするつもりなんだ」
- 「彼は悪くないと、彼女は一見佐っているように見えるけど、完全に的外れな擁護だよ」
- 「あんなアンチにまで粘着して反応するなんて、自ら佐うようなものだ」
これら二つはセットで使われることが非常に多いです。
「あいつまだ伊るの？信者も必死に佐ってるわ」
これが定番の組み合わせですね。
ネット新造語が示す現代の空気
「伊る」と「佐う」は、単なる難読漢字の遊びで終わらず、ネットコミュニティの排他的な感情と、誰かを揶揄する文化を完璧に体現して、現代ネットスラングの双璧として大成功しました。
その背景には、架空の動詞を誰もが知っている前提で話を進め、読者自身を不安にさせるという、SCP-161-JPの秀逸なメタ構造があったことは間違いありません。
僕が感じるのは、この言葉たちが持つ「不必要なものは消えてほしい」という現代社会の息苦しいまでの同調圧力、そして「的外れな善意は邪魔だ」という冷めた視線です。
「伊る」も「佐う」も、相手に面と向かって使う言葉ではありませんが、ネットの隅々で、誰かの存在や行動に対する強い否定的な評価として今日も使われ続けています。
知らずにこの言葉に出くわして困惑していた皆さん、これでこの二つの動詞の奥深さが理解できたのではないでしょうか。
「伊る」＝しぶとく居座ってる（消えてほしいのに）
「佐う」＝愚かにも味方してる（やめろというのに）
この皮肉とユーモアが混じった難読漢字を理解することで、あなたも今のネットの「空気」を掴む一員になれるはずですよ。
僕としては、いつか「佐う」という言葉が、「眠る」や「食べる」のように本当に重要で必要不可欠な概念として認識されるような、穏やかなネットの世界が訪れることを、ひそかに願っていますね。
