今日もネットを賑わせている、ちょっとヒリヒリする話題について、深掘りしていきますよ。
今回取り上げるのは、漫画界の盟主、集英社が主催する「ヤングジャンプ新人漫画大賞」で巻き起こった、生成AI使用疑惑をめぐる騒動です。
新人作家の登竜門で、まさかこんな形でAIの話題が噴出するとは、正直、胸がざわつきますよね。
この騒動は、単に「AIを使ったか否か」という問題を超え、日本の漫画文化、そしてクリエイティブの未来に、とてつもなく重い問いを投げかけている気がしてなりません。
僕たち漫画好き、そしてネットの住人として、この一連の流れを冷静に、かつ情熱をもって追いかけていきましょう。
※個人的には、自作品のキャラクターなり構成に対してAI生成を活用して、作業の効率化を図る(例えば様々なポーズをあらかじめAI生成して作画のヒントにする)というのが良いんじゃないのかなと感じています。
AI生成作品が受賞?ヤングジャンプ新人漫画大賞とは?
■ヤンジャン新人賞とは?漫画界の登竜門の背景
まず、今回の事件の舞台となった「ヤングジャンプ新人漫画大賞」が、どういう賞なのかを整理しておきましょう。
これは、週刊ヤングジャンプが主催する、未来のヒット作家を発掘するためのコンテストなんです。
大賞に選ばれると、賞金100万円に加えて、すぐに連載権を獲得できるという、まさに漫画家志望者にとっては夢のような切符ですよ。
さらに、月間ベスト賞に選ばれると、作品がボイスコミック(ボイコミ)化されるという特典も付いてきます。
審査はプロの編集者だけでなく、現役のプロ漫画家(今回は『ジャンケットバンク』の田中一行先生が審査員を務めました)も加わり、画力、ストーリー、構成を総合的に評価する、ガチ中のガチの登竜門として知られています。
今回、疑惑の対象となったのは、第36回の結果発表で賞金をゲットした作品です。
初投稿でこの快挙、本来なら輝かしいニュースのはずだったんですよね。

ヤングジャンプ新人漫画大賞にAI絵師の疑惑が浮上
■疑惑の核心:AI使用の具体的な根拠と破綻
この作品がAI生成ではないかと疑われるようになった核心は、評価されたはずの「画力」の部分に、AI特有の不自然さや破綻がいくつも見つかったことにあります。
ヤンジャン公式の講評では、この作品に対し「画力が高い」と、絵のクオリティを最大級に褒めていたんです。
しかし、その裏で「改善の余地は多い」「状況設定が複雑すぎる」と、物語や構成については手厳しい評価も出ていたのがポイントですね。
つまり、「ストーリー構成はもう一歩だけど、絵が上手いから賞をあげた」という構図だったわけです。
ところが、ネットのAIに詳しい猛者たちが、公開された作品を分析し始めたところ、次のような具体的な「疑惑の根拠」が次々と発見されたんです。
まず、目立つのが「AI特有の欠陥(ハルシネーション)」です。
女性キャラクターの顔に髭のような線が見える箇所があったり、幼い少女たちの目が溶けているように見える破綻が見つかったり。
こういうの、生成AIが苦手とする細部の描写が崩れる、典型的なサインなんですよね。
さらに、キャラクターの「一貫性の欠如」も大きな問題点として指摘されています。
主要人物のツノの形がコマごとに変わっていたり、同一シーンなのにイマジナリーライン(カメラの位置)を無視した構図が連発されていて、ものすごく見づらいという指摘もありました。
極めつけは、ヒロインの身長が前のコマでは3メートル級に見えたのに、次のコマでは50センチ級に縮んでいるなど、物理的な整合性が完全に無視されている箇所まであったというんです。
また、作画だけでなく、ストーリーやセリフについても「内容が支離滅裂すぎて全く意味が分からない」、「セリフの日本語が不自然で、まるで翻訳を挟んだようだ」という声も上がっていて、絵だけでなく文章生成AIも絡んでいる可能性まで指摘されています。
「絵は綺麗に見えるんだけど、作品力という“味”がない」というのは、AI出力のイラストを組み合わせた漫画が陥りやすい弱点そのものかもしれません。
僕個人としては、AIの絵はパッと見のクオリティは高いけど、大ヒット漫画に必要な「創造性」や「物語の深さ」という点では、やっぱり物足りないと思っているんですよね。
今回の騒動は、まさに「画力だけ評価されて蓋を開けたらAIだった」という、真面目に手描きで頑張ってきた新人さんたちにとっては、一番残酷な形で表面化してしまった事件だと思います。
ヤンジャン新人賞の応募規約でAI使用は禁止?
では、肝心の応募規約はどうなっているのでしょうか?
結論から言うと、ヤングジャンプ新人漫画大賞の応募要項には、現時点(炎上時点)で生成AIの使用を「明確に禁止する」という記載や、「AI作画を申告する義務」は存在しませんでした。

この事実が、議論をさらに複雑にしています。
規約が重視しているのは、主に以下の2点です。
- 作品が「未発表のオリジナル」であること
- 「第三者の著作権等を侵害していない」こと
つまり、制作手段そのものよりも、権利侵害の有無に重きを置いていることがわかります。
だからこそ、ネット上では「規約に違反していないなら問題ない」という意見も一部にはありますが、これには大きな落とし穴があります。
それは、AIが学習する過程で、他者の著作物を無断で使用している可能性があるという点です。
もし、今回の作品の画像生成AIが、著作権者の許可なく既存作品を学習データとして使っていて、その結果、応募作が「第三者の権利を侵害した」と判断された場合、規約に基づいて受賞が取り消される可能性が出てくるのです。
さらに、集英社自体が、過去にAIグラビア写真集を発売したり、『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生の絵柄に変換できるAIを提供したり、ジャンプルーキーでもAI使用を明言した投稿漫画に対して否定せず講評を行ったりと、大手出版社の中でもAI活用に積極的な姿勢を見せてきました。

しかし、集英社自身も、2023年には「無断利用された著作物からの生成は問題」だと声明を出しているため、もし著作権侵害疑惑が濃厚になれば、自社のスタンスとの間で大きな矛盾を抱えることになります。

結局のところ、AI使用そのものがOKだとしても、「創作した本人が描いた作品」という公募の倫理観に照らして、編集部が「創作性の虚偽」と判断するかどうかも、受賞取り消しの大きなカギになるでしょうね。
ヤングジャンプ新人漫画大賞がAI作品で炎上の経緯
この騒動で最も衝撃的だったのが、受賞発表が2025年9月18日だったのに対し、大規模な炎上が始まったのは約2ヶ月以上が経過した2025年11月26日頃だったという事実です。
最初にAI疑惑を指摘するX(旧Twitter)の投稿が拡散され、これが5万以上のいいねを獲得したことで、一気に火がつきました。
Xでは「ヤングジャンプ新人漫画大賞 生成AI」といったキーワードで、数十万件もの関連投稿が飛び交う、文字通りの大炎上となりました。
この「2ヶ月の空白」は、非常に重い意味を持っています。
冷静に考えてみてください。
もしこの作品が、世に出た瞬間にAIだと見抜けるような「粗悪漫画」だったら、AIアレルギーが強いネットの空気からして、即座に顕在化していたはずです。
しかし、実際は2ヶ月もの間、プロの編集者や審査員、そして多くの読者たちが、この作品を「新人の描いた普通の漫画」として認識していたのです。
炎上後に「よく見たらおかしい」と指摘するのは簡単です。それは、犯人を教えられた後にミステリー小説を読み返すような「答え合わせ」に過ぎないんですよね。
僕たちはもう、AIと人間が描く線の区別が、パッと見ではほとんどつかなくなっているという事実を、この事件は残酷なまでに証明してしまったわけです。
特に厳しかったのは、審査員の「画力が高い」という評価に対し、その絵がプロンプトで出力された生成物だったという点です。
これはプロの選考委員すら欺いた「認知の敗北」と呼べるかもしれません。
真面目に手描きで努力している漫画家志望者からは、「真面目に描いている人がかわいそう」、「努力が無駄になる」といった悲痛な声が上がり、この騒動は「AIへの拒否反応」「画力評価」「高額賞金」の3点コンボで、公平性への疑念を一気に増幅させてしまいました。
ヤングジャンプ新人漫画大賞にAI絵師の疑惑が浮上|今後の影響を考察
■今後の可能性と考察:創作の「チューリングテスト」
今回のヤンジャン騒動は、漫画業界全体に「AI時代の創作の線引き」を問い直すきっかけを与えました。
今後、出版社が取るべき対応としては、いくつか考えられます。
まず、最低限の対策として、募集要項に「生成AI不可」を明確に記載するなりして、生成AI利用のルールを厳格化する必要があるでしょう。
ただ、もし集英社がAI推進の姿勢を崩さないのであれば、「AIと手描きの作品を同じ土俵で評価するのはおかしい」という批判を避けるため、「生成AI部門」を新設するという選択肢も出てくるかもしれません。
僕の個人的な見解としては、今回の事件が最も恐ろしいのは、これが2025年時点の技術で起きているということです。
生成AIの進化速度は尋常ではありません。今はまだ、指の数がおかしかったり、キャラクターの一貫性がブレたりという「証拠」が残っていますが、それも時間の問題でしょう。
今回の騒動は、まさに「AIが描いたものなんて、すぐわかる」というクリエイターや編集者たちが縋ってきた精神論が崩壊した瞬間であり、ある種の「チューリングテスト」だったと思います。
そして、2025年時点で早くも結果はAI側の勝利でした。
読者の多くは、漫画を読むスピードの中で、細かいAIのノイズを意識せず、作品の「雰囲気」だけで楽しんでしまうことも明らかになりました。
このまま技術が進めば、来年の新人賞では、応募作品の半分がAI支援を受けているかもしれない。でも、誰にもそれを指摘できない世界が、もう目の前まで来ている気がして、背筋が寒くなります。
まとめ
ヤングジャンプ新人漫画大賞でのAI使用疑惑は、新人作家の登竜門で、AIが「画力」という最も評価されるべき要素を代替してしまったことで、大きな公平性の問題を引き起こしました。
応募規約にAI禁止の明記はないものの、もし学習データに由来する第三者の著作権侵害が確認されれば、受賞取り消しの可能性は残されています。
この炎上騒動の最大の教訓は、プロですらAIと人間の描く線の区別が、2ヶ月という期間見抜けなかったという、AI技術の進化の恐ろしさを実感させた点にあります。
漫画業界は今、「AIを道具として認めるのか、それとも人間の創作の純粋性を守るのか」という、文化の根幹を揺るがす選択を迫られています。
この一件が、漫画界がAI時代を乗り切るための新しい倫理基準やルールを作る、「新しい時代の幕開けを告げるセカンドインパクト」となるのか。
僕たち読者も、目の前の作品がどんなプロセスで作られたかにかかわらず、その「価値」をどう定義し直すのか、深く考え直す必要がありそうです。
今後の集英社の対応に、引き続き注目していきましょう。
