テレビ画面越しに見つめるあの温かな情景に、いつだって胸が熱くなってしまいます。
人生の扉を新しく開き、自分らしい生き方を紡ぎ出す人々を追いかける番組のなかでも、福島県田村市で誕生したホップ酵母のパン屋さんのストーリーは特に深く心に響きました。
静かな山あいのまちで、地元の恵みであるホップから命のような酵母を育て、ひとつひとつ丁寧にパンを焼き上げる姿には、単なるグルメの枠を超えた生き方の美しさが詰まっています。
画面の向こうから漂ってくるような香ばしい焼き立てパンの魅力や、店主さんの情熱、そして現地へ足を運びたくなるようなスポット情報を、思いを込めてじっくりとお届けします。
人生の楽園|福島・田村市 ホップ酵母パン「ひなたベーカリー」
福島県田村市都路町にたたずむ小さなパン屋さんのドアを開けると、包み込まれるようなやさしい小麦と豊かな香りが鼻をくすぐります。
このお店で焼かれているパンの最大の魅力は、ビール醸造に使われる地元産のホップから生み出された自家製酵母、いわゆるホップ種を使用している点にあります。
昭和の初め頃まで日本で愛されていた伝統的な発酵種を独学でよみがえらせ、りんごや米麹、じゃがいもなどを合わせながらじっくりと種継ぎをして大切に育て上げられています。
ホップが持つ自然な抗菌作用によって雑菌を抑えながら育った酵母は、イースト特有の強い匂いがなく、噛みしめるほどに素朴で奥行きのある味わいを生み出します。
焼き上がったパンは、外側がカリッと芳ばしく、中は驚くほどふんわりモチモチとしていて、しっとりとした軽い口当たりが一度食べたら忘れられない余韻を残します。
素材への誠実なこだわりも徹底されていて、北海道産の厳選小麦をはじめ、身体に刺激の少ないきび砂糖や天然塩を使い、添加物を一切足さずに作られています。
看板商品である食パンの美味しさはもちろんですが、訪れた人の心を掴んで離さないのが、注文を受けてから目の前で作られるオーダーメイドのサンドイッチです。
ショーケースには地元の新鮮な無農薬野菜やたまご、無添加ベーコンのほか、手作りのラタトゥイユやカレーといったお惣菜がずらりと並んでいます。
食パンやバゲット、バンズといった土台となるパンを選び、お好みの具材とソースを掛け合わせることで、世界にひとつだけの特別なサンドイッチが完成します。
自分で具材を選ぶ高揚感だけでも十分に楽しいのですが、このスタイルを取り入れた背景には、パン屋さんを悩ませる売れ残りや食品ロスを失くしたいという温かな工夫が隠されています。
あらかじめ惣菜パンとして作り置きせずシンプルなパンのまま残すことで、万が一余ってもラスクやパン粉へと姿を変えて美味しく生かされる仕組みになっています。
食べる人の身体を気遣う優しさと地球環境への配慮が見事に調和していて、一口かぶりつくたびにじんわりと幸せな気持ちが広がっていきます。
福島・田村市 ホップ酵母パン「ひなたベーカリー」開業の経緯|人生の楽園
この温もりあふれるお店を切り盛りしているのは、地元田村市常葉町で生まれ育った渡邉咲月さんです。
20代の頃から趣味としてパン作りに夢中になり、焼き上がったパンをご近所さんへ配るほど情熱を注いでいた時期がありました。
その後、人生には大きな波が訪れ、離婚という辛い転機を経て2人のお子さんを連れて故郷である田村市へと戻ってきました。
家事と子育てに追われながら、お父様が営む工場で生産管理の仕事に就き、寝る間も惜しんで我むしゃらに働く日々が続きました。
やがて子どもたちが成長して手がかからなくなった頃、自分自身の心と向き合うようにして、ふたたびパン作りの楽しさを取り戻していきます。
転機となったのは2020年、隣町の都路町にクラフトビール醸造を行うホップガーデンブルワリーが誕生したことでした。
地元で育てられたホップの存在を知った咲月さんは、このホップを使ってパンが焼けないだろうかと一念発起し、独学で自家製酵母作りに挑戦を始めました。
何度も失敗を重ねながらも試行錯誤を繰り返し、ついに風味豊かなホップ酵母を完成させた時の喜びはどれほど大きかったことでしょうか。
2021年からは会社員として働きつつ、月に1度のマルシェ出店から活動をスタートさせました。
一口食べた人々からの熱い声に背中を押されるように週末営業へと広がり、ついに昨年2025年12月、都路町の豊かな緑に囲まれた場所に念願の実店舗をオープンさせました。
元々スイーツ店だった空き店舗が取り壊されるかもしれないと知り、地域の大切な場所を守りたいという強い縁を感じてこの地を選んだそうです。
敷地に並ぶ2棟の可愛らしいトレーラーハウスは、ひとつが販売とイートインスペース、もうひとつがパンの加工所になっています。
食を通して人が幸せになり、故郷の小さな経済や笑顔が繋がっていく拠点にしたいという真っ直ぐな想いが、パンの美味しさとなって咲き誇っています。
福島・田村市 ホップ酵母パン「ひなたベーカリー」場所・アクセス|人生の楽園
お店が位置しているのは、福島県田村市都路町岩井沢字道ノ内65-1という、阿武隈高原の穏やかな自然に抱かれたエリアです。
アウトドア施設であるグリーンパーク都路の敷地内にあり、ホップジャパンの施設を目印に向かうと分かりやすいです。
お車で訪れる場合は、磐越自動車道の田村スマートインターチェンジから約30分、または船引三春インターチェンジから約40分ほどで到着します。
田村市都路町へと向かう際は、国道288号線を経由して走ると道幅も広くドライブを快適に楽しむことができます。
施設内には広々とした無料駐車場が完備されているため、ドライブの途中にマイカーでゆったり立ち寄るのにも最適です。
公共交通機関を利用される場合は、JR磐越東線の船引駅から福島交通バスに乗り約45分、中屋敷バス停で下車するとすぐ目の前に到着します。
営業時間は朝10時から夕方17時までとなっており、定休日は火曜日と水曜日を中心に設定されています。
遠方から訪れる際は、臨時休業やイベント出店情報が更新されるお店の公式インスタグラムなどをあらかじめ確認しておくと安心です。
心地よい風が吹き抜けるオープンテラス席も用意されており、愛犬と一緒にのんびりと焼きたてパンを味わう至福の時間を過ごせます。
福島・田村市 ホップ酵母パン「ひなたベーカリー」周辺の観光情報|人生の楽園
パン屋さんで心とお腹を満たした後は、田村市が誇る雄大な自然や神秘的なスポットへ足を伸ばしてみるのがおすすめです。
お店から車ですぐの場所にあるあぶくま洞は、悠久の時が創り上げた東洋一とも称される美しさを誇る鍾乳洞です。
洞内は年間を通して15度前後に保たれており、無数の鍾乳石や石筍がライトアップされた幻想的な世界を探検できます。
さらに少し冒険心をくすぐられたい方には、すぐ近くにある入水鍾乳洞で冷たい地下水に足を浸しながら進む本格的なケイビング体験も人気を集めています。
星空の美しさで知られる滝根町エリアには星の村天文台があり、県内最大級の反射天体望遠鏡で宇宙の神秘に触れることができます。
お子様連れのご家族や昆虫好きにはたまらないのがカブトムシ自然王国ムシムシランドで、緑豊かな山全体でたくさんの昆虫と触れ合えます。
また、街道沿いの集落を見守るように鎮座する屋形や朴橋、堀越のお人形様は、江戸時代から伝わる魔除けの巨大な藁人形で、歴史のロマンを感じさせてくれます。
お店があるグリーンパーク都路の敷地内では、クラフトビールの醸造所であるホップガーデンブルワリーで新鮮なビールを楽しんだり、キャンプやアウトドアを満喫することもできます。
自然の息吹と人の温もりにあふれた田村市の魅力を一度に味わう旅は、日常の慌ただしさをすっかり忘れさせてくれます。
まとめ
人生の途中で立ち止まり、故郷の温もりに包まれながら自分のやりたいことを見つけ出した物語は、私たちの心に静かな勇気を届けてくれます。
地元のホップに光を当て、酵母という生き物と対話するように作られるパンには、食べる人を幸せにしたいという一途な思いが込められています。
焼きたての香ばしい食パンをちぎって味わう瞬間や、自分好みに作ったサンドイッチを頬張る時間は、かけがえのない思い出になるはずです。
人生の楽園で描かれた素晴らしい景色と味を確かめに、あなたも次の休日に田村市都路町へ出かけてみませんか。
優しく輝く太陽のような笑顔と美味しいパンが、きっとあなたをあたたかく迎えてくれます。
