苗場の山々が、ついに「平沢進」という特異点に飲み込まれたあの夜の興奮が、いまだに冷めやらずにいます。
2026年7月26日、フジロック最終日のグリーンステージ。
僕たち馬の骨にとっても、そして日本の音楽史にとっても、一つの歴史が大きく動いた瞬間を、詳細に振り返っていきたいと思います。
フジロック2026平沢進ライブ情報
■ついに辿り着いたメインステージ
思えば2019年のレッドマーキーでの衝撃的な初出演から始まり、2021年のホワイトステージを経て、ついに辿り着いたのがこのフェス最大のメインステージ、グリーンステージでした。
72歳という年齢を全く感じさせない平沢進が、19時というプライムタイムに降臨するという事実に、開演前から現場の空気は異様な緊張感に包まれていましたね。
今回は「開錠系亞種音」というタイトルのもと、サポートメンバーの会人、SSHOとTAZZを従えた唯一無二のプロジェクトとして登場しました。
過去の出演時もSNSで大きなバズを起こしてきましたが、今回は初のメインステージということで、コアなファンだけでなく親子連れや海外からの観客も多く、期待値は最高潮に達していました。
フジロック2026平沢進ライブレポート
■苗場を異界へと変えた圧巻の演出
雨上がりの澄んだ空気が漂う中、ステージの中央には明和電機製のレーザーハープ「輝鈴(Qilin)」と、禍々しくも美しいテスラコイルが鎮座していました。
開演の19時、モニターに映し出された「Hello Human」「Hello 亞種音」というメッセージ、そして奇怪かつ機械的な動作で現れた会人の姿に、会場の空気は一瞬で塗り替えられました。
1曲目の『DUSToidよ歩行は快適か?』で、平沢進が放たれるレーザー光線を弾き飛ばすアクションを見せた時、もはやそこは苗場ではなく、彼だけの領域、異世界の入り口となりました。
続く『達人の山』では、アルミ削り出しのEVOギターを奏でる手元が巨大スクリーンに映し出され、あのヨーデルのような超高音の伸びやかな歌声が、夜の山々に突き抜けていくのを感じて、僕は鳥肌が止まりませんでした。
個人的に一番の衝撃だったのは、誰も予想していなかった未発表の新曲『パルテノン』が初披露された瞬間で、地鳴りのような歓声が上がったのを覚えています。
赤い扇子を手に舞いながらテルミンを操る雅やかなパフォーマンスや、青白い放電が炸裂する『夢みる機械』での巨大な一体感は、もはや音楽ライブを超えた一つの宗教儀式のようでしたね。
終盤に畳み掛けられた核P-MODELの重厚な『OPUS』や、アニメ『ベルセルク』でお馴染みの『BERSERK-Forces 2016』のライブ初披露には、国内外の観客が恍惚として見入り、整然とした中にも凄まじい熱量が渦巻いていました。
フジロック2026平沢進セトリ(セットリスト)
■キャリアの集大成となる至高のセトリ
当日のセットリストは、P-MODEL時代からソロ、そして核P-MODELの楽曲を大胆なニューアレンジで再構築した、まさにこれまでの歩みを凝縮したような構成でした。
まず1曲目は『DUSToidよ歩行は快適か?』、そして2曲目に2013年以来の演奏となる『達人の山』という、驚きの幕開けです。
続いて3曲目に『OH MAMA!』、4曲目にはなんと約14年ぶりとなる往年の名曲『ルベド (赤化)』が披露され、タイのエスニックな映像美と共に観客を魅了しました。
5曲目に世界初公開の新曲『パルテノン』を挟み、6曲目にはテスラコイルの光が炸裂する『夢みる機械』で会場の熱気はさらに加速します。
7曲目の『Julia Bird』と8曲目の『Nurse Cafe』は、2026年版の洗練された響きを纏い、特に扇子を使った演出がスタイリッシュで美しかったです。
9曲目に幻想的な『Caravan』、10曲目に重厚な『OPUS』、11曲目に攻撃的な『遮眼大師』と続き、平沢進というアーティストの表現の幅広さに改めて圧倒されました。
そして12曲目に待望の『BERSERK-Forces 2016』、ラストの13曲目にはファンファーレのような響きと共に『救済の技法』が演奏され、深い感動と余韻を残して1時間の宴は幕を閉じました。
セットリスト
全13曲(演奏時間:約60分)
- DUSToidよ歩行は快適か?(P-MODEL)
- 達人の山
- OH MAMA!
- ルベド (赤化)
- パルテノン
- 夢みる機械
- Julia Bird(P-MODEL)
- Nurse Cafe
- Caravan
- OPUS(核P-MODEL)
- 遮眼大師
- BERSERK-Forces 2016
- 救済の技法
まとめ
■進化し続ける72歳のマイルストーン
終わってみれば、1時間という限られた時間の中で、過去・現在・未来が見事に交錯する、あまりにも濃密で神々しいステージでした。
最後、ステージを去り際に会人の一人が振り返って客席をスマホで撮影していましたが、あの祈るように見入っていた僕たちの姿は、彼らの目にどう映ったのでしょうか。
72歳にして常に新しい機材やアレンジに挑み、進化の歩みを止めない彼の姿には、言葉では言い表せないほどの勇気をもらいました。
同刻に他のステージを観ていた人たちには決して味わえない、苗場を完全に「異界」へと変えてしまったこの体験は、間違いなく2026年のフジロックにおける最高のハイライトだったと確信しています。
平沢進という唯一無二の存在が放つオルタナティブの光は、これからも多くの人々の心を開錠し、新しい世界を映し出し続けてくれるに違いありません。
