聖なる夜、クリスマスイブのひとときを彩る、最高に温かなヒューマンドラマが私たちの元に届きました。
フジテレビ系で放送されるスペシャルドラマ「ドビュッシーが弾けるまで」は、音楽とお酒、そして止まっていた時間が再び動き出す奇跡を描いた、静かな感動を呼ぶ物語です。
30代を迎え、仕事や将来にふと立ち止まってしまう瞬間がある私にとっても、この作品が放つ「挑戦に遅すぎることはない」というメッセージは、心に深く突き刺さるものがありました。
冬の澄んだ空気の中で奏でられるピアノの音色が、失意の底にいる人々の心をどのように溶かしていくのか、その全貌を深掘りしていきましょう。
ドビュッシーが弾けるまで(ドラマ)あらすじ
■クリスマスイブに届く、魂を揺さぶる再生の物語「ドビュッシーが弾けるまで」のあらすじ
物語の主人公は、商店街で代々続く小さな時計店を営んでいる、職人気質の男・渡会喜一郎です。
彼は2年前に最愛の妻である小百合を亡くし、それ以来、まるで自分自身の人生の時計も止まってしまったかのような、孤独で静かな日々を過ごしていました。
そんな喜一郎の前に現れたのが、かつてピアニストになる夢を抱きながらも、厳しい現実の壁にぶつかってその夢を絶ってしまった青年、佐々木匠です。
匠もまた、28歳という若さでありながら、心に蓋をして煮え切らない毎日を送る「夢の敗北者」でした。
全く異なる人生を歩んできた二人が、ひょんなことから出会い、喜一郎が「亡き妻が愛したドビュッシーの『月の光』を弾けるようになりたい」と願ったことから、奇妙なピアノの師弟関係が始まります。
ピアノの旋律とウイスキーの香りが漂う中で、二人は少しずつ心を通わせ、互いの傷ついた過去を奏で直していくことになるのです。
さらに、亡くなったはずの小百合から喜一郎のもとへ手紙が届き始めるという、不思議で切ないミステリーのような要素も物語に彩りを添えています。
単なる音楽ドラマに留まらず、世代を超えた二人の男が再び立ち上がる姿を丁寧に描き出した、まさに大人のための再生の物語と言えるでしょう。
個人的には、70歳を過ぎてから全く未経験のピアノに挑む喜一郎の姿に、今の自分も何か新しいことを始めたくなるような勇気をもらいました。
ドビュッシーが弾けるまで(ドラマ)原作は小説?
■この物語は実在の小説がベース?気になる原作の真実を探る
「ドビュッシー」と聞くと、多くのミステリーファンの方は、中山七里さんの大ベストセラー小説「さよならドビュッシー」を思い浮かべるかもしれません。
あちらもピアニストの岬洋介が登場する素晴らしい音楽ミステリーで、過去には映画化やドラマ化もされています。
しかし、今回放送される「ドビュッシーが弾けるまで」は、その小説を原作としたものではありません。
このドラマは、新進気鋭の脚本家である石田真裕子さんが書き下ろした、完全オリジナルのストーリーなのです。
もちろん、ドビュッシーの「月の光」が象徴的に使われているという共通点はありますが、物語の構成やキャラクター設定は全くの別物です。
この作品は、高齢の男性が若者と出会い、芸術を通じて再生していくという構造から、韓国の人気ドラマ「ナビレラ-それでも蝶は舞う-」のピアノ版とも称されています。
誰かの書いた物語をなぞるのではなく、今この時代を生きる人々の葛藤を等身大で描くために生み出された、フレッシュなオリジナル脚本である点に注目してほしいです。
既存の原作がないからこそ、結末がどうなるのか誰にも分からず、最後までドキドキしながら見守ることができるのがこのドラマの醍醐味ですよね。
私自身、最初は有名なあの小説が原作だと思い込んでいたのですが、オリジナル作品だと知って、より脚本家のメッセージ性を強く感じるようになりました。
ドビュッシーが弾けるまで(ドラマ)脚本は石田真裕子
■脚本家・石田真裕子さんの驚きの経歴とプロフィールの全貌
この感動的な物語を紡ぎ出した脚本家、石田真裕子さんの経歴が、実はドラマの内容以上にドラマチックで驚かされます。
彼女は1988年生まれの東京都出身で、早稲田大学文化構想学部で小説執筆や文芸批評を学んでいました。
しかし、卒業後すぐに脚本家になったわけではなく、出版関連の会社に就職し、15年近くもの間、一人の会社員として働いていたのです。
30代半ばを過ぎても夢を諦めきれず、独学で脚本を学び続け、2024年に「第36回フジテレビヤングシナリオ大賞」で、応募総数1585編の頂点に立ちました。
「9割笑えて1割泣ける」脚本を目指しているという彼女の言葉通り、受賞作の「人質は脚本家」も非常に高い評価を受けています。
会社員として、また母親として日常を生きてきた彼女だからこそ書ける、地に足の着いたリアルなセリフが、多くの視聴者の心に響くのでしょう。
この「ドビュッシーが弾けるまで」は、彼女がデビューしてからわずか数日で放送される2作目の作品であり、業界内でも「即戦力の才能」として熱い視線を浴びています。
自分の人生の葛藤をそのまま脚本に投影させるような、熱量の高い執筆スタイルが彼女の最大の魅力だと感じます。
同じ30代として、会社員から夢を叶えた彼女の背中は、私にとっても非常に眩しく、希望の光のように見えます。
ドビュッシーが弾けるまで(ドラマ)キャスト相関図
■世代を超えた共演!キャストと登場人物、そしてドラマを繋ぐ相関図の秘密
このドラマの魅力を最大限に引き出しているのが、実力と人気を兼ね備えた素晴らしいキャスト陣です。
まず、不器用ながらも一途にピアノに向き合う渡会喜一郎を演じるのは、名優・國村隼さんです。
芸歴50周年という節目に、全くのピアノ未経験から猛練習を重ねてこの役に挑んだその姿勢には、監督も脱帽したといいます。
そして、夢を諦めた青年・佐々木匠を演じるのは、人気グループINIのメンバーである尾崎匠海さんです。
尾崎さんもまた、ほぼ初挑戦というピアノを1か月間、仕事の合間を縫って必死に練習し、役名の「匠」と同じく繊細な表現を見せてくれます。
匠の恋人であり、幼なじみでもある須藤ゆりあを演じるのは、日向坂46の元メンバー、加藤史帆さんです。
ゆりあは、匠の演奏に不思議と心を動かされる女性で、彼の再起を側で見守る大切な役割を担っています。
さらに、喜一郎の亡き妻・小百合役には、ベテランの片平なぎささんが扮し、回想シーンなどを通じて夫婦の深い愛情を表現しています。
また面白い趣向として、脚本家の別作品である「人質は脚本家」から、内田理央さん演じる郵便局員・鮫島音が登場し、二つの作品の世界線を繋いでいます。
この他にも、西堀亮さんや春海四方さんといった個性豊かな脇役が、商店街の温かな空気感を作り上げています。
ベテランの深みのある演技と、若手のフレッシュな情熱がピアノの連弾のように重なり合う、贅沢なアンサンブルを堪能できるはずです。
まとめ
■新しい一歩を踏み出す勇気をくれる最高のクリスマスプレゼント
「ドビュッシーが弾けるまで」という作品は、単なるクリスマスの特番ドラマという枠を越えた、人生のバイブルのような輝きを放っています。
何かを始めるのに遅すぎることなんてない、というシンプルで力強い言葉が、國村隼さんの奏でる音色と共に心に染み渡ります。
最愛の存在を失った悲しみも、夢を断たれた挫折感も、音楽という共通言語を通じて癒やされていく過程が、本当に丁寧に描かれています。
監督の平野眞さんは、あえてカメラを動かさず、俳優たちが実際に弾いている「手元」をしっかり撮ることで、その努力と熱量を映像に封じ込めました。
12月24日の夜、お酒を片手にのんびりとこのドラマを眺めれば、きっと明日から少しだけ前を向けるような、そんな温かな気持ちになれるでしょう。
皆さんも、テレビから流れてくるドビュッシーの調べに耳を澄ませて、自分自身の「止まった時計」を動かしてみませんか。
きっと、忘れかけていた大切な何かが、その音色の中に隠されているはずですから。
ピアノの鍵盤一つひとつが、私たちの人生の選択肢のように見えてくる、そんな不思議な魔法にかかる一夜になることを願っています。
