史上最多のエントリー数を記録し、王者たくろうの誕生で幕を閉じたM-1グランプリ2025ですが、その熱狂は今も冷める気配がありません。
しかし今年の大会を語る上で避けて通れないのが、審査員席を巡る激しいドラマと、ある一人の天才芸人が放った強烈なインパクトです。
漫才を愛してやまない僕としても、今回の「審査」を巡る一連の騒動には、お笑い界の新しい時代の幕開けを感じずにはいられませんでした。
M-1グランプリ|粗品が突きつけた審査の覚悟
今回のM-1で審査員席に座っていなかったにもかかわらず、誰よりもその存在感を示したのは霜降り明星の粗品さんだったのではないでしょうか。
彼は直近の「THE W 2025」で初めて審査員を務め、これまでの「褒め合い」が主流だった賞レースの風潮に真っ向から挑戦するような、超辛口な分析を披露しました。
ネタの構造やボケのタイミング、さらにはツッコミの精度までを冷徹に分解するその姿勢は、出場者の人生を背負う審査員としての並々ならぬ覚悟の表れでもあったはずです。
「面白くないものには面白くないと言う」と宣言し、実際に厳しい言葉を並べた彼のスタンスは、馴れ合いを排した真剣勝負の場を求めていた視聴者の心に深く刺さりました。
粗品に揺れるネットの反応と熱量
当然ながら、こうした粗品さんの妥協のない審査スタイルに対しては、ネット上でも凄まじい熱量の議論が巻き起こりました。
「内容が的確すぎてぐうの音も出ない」と彼の専門性を絶賛する声がある一方で、やはりそのコメントの長さや強すぎる言葉に拒否反応を示す意見も少なくありませんでした。
一部では「審査員が目立ちすぎて出場者が可哀想だ」という懸念も上がっており、お茶の間の意見は今もなお真っ二つに割れている状況です。
それでも、粗品さんの行動がお笑いファンに「本当の審査とは何か」を再考させるきっかけを与えたことは、今の停滞気味なバラエティ界にとって大きな刺激になったはずだと僕は確信しています。
粗品と哲夫(笑い飯)の論争
■哲夫との因縁が招いた奇跡
この熱狂がさらに加速したのは、同じく「THE W」で審査員を務めた笑い飯の哲夫さんが、自身のラジオ番組で粗品さんの審査時間の長さに苦言を呈したことがきっかけでした。
これに黙っていないのが粗品さんで、YouTubeで51分にも及ぶ反論動画を公開し、「哲夫さんは小心者でダサい」とまで言い切る異例のガチ喧嘩に発展したのです。
迎えたM-1本番の冒頭、司会の今田耕司さんが哲夫さんの紹介をあえて飛ばし、哲夫さんが「今、注目の人や!」と自虐的に突っ込んだシーンは、緊張感に満ちた会場を一気に和ませる最高のプロの仕事でした。
哲夫さんは「注目されるべきは僕なんかじゃなくてネタだ」と強調しながらも、武智さんや久保田さんの過去の騒動まで引き合いに出してボケ倒し、因縁を笑いへと昇華させてみせました。
M-1グランプリ|粗品が審査員の可能性は?
■審査員の若返りと粗品の影
今回の騒動を経て、M-1の審査そのものにも、ネタの内容をより詳細に、そしてロジカルに講評する傾向が強まったように感じられます。
実際にエバースやたくろうといった実力派が高く評価された背景には、哲夫さんを筆頭とした審査員たちの審美眼の確かさと、それに応える芸人たちのレベルの高さがありました。
業界内では、今回の粗品さんの大活躍を受けて、彼がいよいよ来年以降のM-1審査員に就任するのではないかという期待が日増しに高まっています。
運営サイドが審査員の若返りを目指していることもあり、もし粗品さんがあの席に座ることになれば、大会の緊張感はかつての松本人志さんがいた頃のような、あるいはそれ以上のものになるでしょう。
まとめ
■最後に残る熱いお笑い愛
いろいろな議論やバトルがありましたが、結局のところ、全員がお笑いという文化を心から愛しているからこそ、これほどまでに熱くなれるのだと思います。
哲夫さんが見せたベテランの懐の深さと、粗品さんが貫いた若き捕食者としての鋭さ、その両方が今のお笑い界をより豊かなものにしているのは間違いありません。
一人のファンとして、これからも彼らがどんな言葉を紡ぎ、どんな新しい才能を世に送り出してくれるのか、期待に胸を膨らませながら追いかけ続けたいと思います。
今年も素晴らしい笑いを与えてくれた全ての漫才師と審査員の皆さんに、心からの敬意を込めてこの記事を締めくくりたいと思います。
