いや~、皆さん、『TOKYOタクシー』観ましたか?
これ、公開前から話題騒然でしたけど、いざ蓋を開けてみたら、ただの話題作じゃなかったですね。
日本の巨匠・山田洋次監督が、あのフランスの感動作『パリタクシー』を、倍賞千恵子さんと木村拓哉さんという「リアル・ハウルコンビ」でリメイクしたってだけで、もう胸が熱くなりました。
今回は、まだ観ていない方、あるいは観たけど改めてストーリーを整理したい方に向けて、この「たった一日の人生ドライブ」の魅力を、ネタバレありで徹底解説していきます。
特にラストの展開は、知っておくことでより深く感動できるはず。
どうぞ、タクシーの後部座席に座っているようなリラックスした気持ちで、読んでみてくださいね。
TOKYOタクシー(映画)ネタバレ|あらすじ
■東京タクシー あらすじ:人生の終活とタクシー運転手の苦悩
この物語は、人生の終盤を迎えつつあるマダムと、日々の生活に追われるタクシー運転手という、一見交わることのない二人の偶然の出会いから始まります。
主人公の一人、宇佐美浩二(木村拓哉さん)は、夜遅くまで働き詰めの個人タクシー運転手です。
彼が抱える悩みは切実で、特に娘さんが音大付属高校への推薦入学を控えているため、その高額な入学金や授業料(100万円以上は確実でしょう)の工面に頭を悩ませています。
そんな浩二のもとに、同僚の急なキャンセルで、一台の長距離の依頼が舞い込みます。
それが、高野すみれ(倍賞千恵子さん)という85歳の上品なマダムを、東京の柴又帝釈天から神奈川県の葉山にある高齢者施設まで送るという仕事でした。
車に乗り込んだすみれさんは、これが「東京の見納め」だと告げ、浩二に「いくつか寄ってみたいところがあるの」と、思い出の地を巡る寄り道をリクエストします。
浩二は最初はぶっきらぼうで愛想のない対応でしたが、東京の街を走らせるうちに、すみれさんが語り始める壮絶な人生の物語に、次第に心を動かされていくことになるのです。
TOKYOタクシー(映画)ネタバレ|ストーリー解説
■マダムの衝撃的な過去と心の交流
タクシーの車内という密室空間で、すみれさんが語り始めた半生は、戦後の激動の時代を生き抜いた、想像以上に重く、濃密なものでした。
彼女は、若き日(蒼井優さん)に在日朝鮮人二世の男性と恋に落ちるも、彼は祖国へ去り、一人で息子を育てることになります。
その後再婚した夫(迫田孝也さん)が、連れ子である息子に容赦ない暴力をふるうようになり、ここで、この映画の最も衝撃的な事件が起こります。
息子を守りたい一心で怒りに駆られたすみれさんは、夫に睡眠薬を飲ませて眠らせた後、なんと熱した油を夫の下半身にかけるという壮絶な行動に出てしまうのです。
その結果、彼女は罪で懲役9年を宣告されることになりました。
刑務所にいる間に、愛する息子がバイク事故で亡くなっていたという、あまりにも悲しい事実も浩二に明かされます。
しかし、すみれさんの強さはそこでは終わりません。
出所後は単身アメリカへ渡り、ネイルアートの技術を学んで、帰国後ネイルサロンの経営者として大成功を収めていたのです。
この波乱万丈で、どこか寂しげな人生の告白を聞くうちに、娘の学費問題で切羽詰まっていた浩二の心は大きく揺さぶられます。
施設への到着が遅れた二人は、夜の横浜で夕食を共にするなど、運転手と客という関係を超えて、まるで年の離れた親子や友人のように親密になっていきます。
特に浩二が、娘さんに頼まれていたシュークリームを買ってあげた時、すみれさんが少女のように喜ぶ姿は、胸がきゅんとする瞬間でしたね。
葉山の施設に到着し、すみれさんが「もう少しこの時間を楽しみたい」と横浜のホテルに泊まるというわがままを言った時、浩二さんが「それはわがままだ」と優しく諭す場面は、二人の距離が本当に縮まったからこそのやり取りで、すごく印象的でした。
TOKYOタクシー(映画)ネタバレ|最後(ラスト)の結末は?
■最後の結末:奇跡の小切手と浩二の涙
葉山の高齢者施設に到着し、すみれさんはタクシーを降りますが、慌てていたためか料金を払わずに施設に入ってしまいます。
浩二さんは「また妻と一緒に面会に来ますから、その時に払ってください」と優しく言い残し、その場を後にします。
しかし、約束通り1週間後、妻(優香さん)を伴って施設を訪れた浩二さんを待っていたのは、すみれさんが心臓病で亡くなったという知らせでした。
浩二さんは、たった一日を共にしたすみれさんの突然の死にがく然とします。
その後、家族で葬儀に参列した浩二さんは、すみれさんの司法書士(笹野高史さん)から、彼女からの感謝の手紙と小切手を受け取ります。
その手紙には、浩二さんとのドライブが人生で最高の、とても楽しい一日だったこと、「私には必要のないお金だけれど、あなたには必要でしょう」と、自分の財産を浩二さんの家族のために使ってほしいという遺言が綴られていました。
そして、中に入っていた小切手の金額を見て、浩二さんと奥さんは呆然とします。
その金額は、なんと1億円だったのです。
娘さんの学費どころか、全ての経済的な悩みが一瞬で解決し、家族でヨーロッパ旅行も行けるほどの、人生を根底から変える贈り物でした。
帰り道、ハンドルを握る浩二さんは、すみれさんとのたった一日の旅を思い返し、静かに涙を流します。
この結末は、すみれさんの人生の終活と、浩二さんの人生の再始動が交差した、まさに悲しいけれど温かいハッピーエンドでした。
TOKYOタクシー(映画)ネタバレ|評価レビュー
■評価:キムタクの変貌と倍賞千恵子の圧倒的な存在感
この映画、公開直後から高い評価を集めています。
興行収入は公開4日間で4億円を超え、邦画実写が初登場1位を獲得するのは久しぶりという、快挙を成し遂げました。
SNSでも「今年いちばん泣いた」という声が多く、特に静かな人間ドラマが好きな人には深く刺さる作品です。
大スターを「普通の男」にした山田監督の手腕
まず、注目すべきは木村拓哉さんの演技です。
彼は今回、娘の学費に悩む「冴えないけど優しいお父さん」という、庶民的なタクシー運転手・宇佐美浩二を演じています。
これまでの「何を演じてもキムタク」というイメージを覆し、「キムタクでしかない演技」を意識的に捨てているのが伝わってきました。
評論家やファンからも「受け身に徹した芝居が特に良い」、「絶妙にリアルな中年の疲れが出ていた」 と絶賛されています。
疲れた横顔や、すみれさんの話を聞くときの静かな眼差し、そしてラストシーンでこみ上げる涙は、彼の新たな俳優としての可能性を感じさせてくれました。
倍賞千恵子の「国宝級」の説得力
そして、この映画を支えているのは、やはり倍賞千恵子さん演じる高野すみれさんの存在感です。
倍賞さんは、壮絶な過去を背負いながらも、どこか凛とした強さと可愛らしさを併せ持つマダムを見事に体現しています。
特に、過去を語るシーンの静かなトーンと、ふとした瞬間に見せる無邪気な表情のギャップがずるい!
彼女の言葉一つ一つに「人生の味」があり、その圧倒的な存在感と説得力のおかげで、物語全体が深く心に響いてきます。
原作ファンからの賛否両論
ただし、この作品はフランス映画『パリタクシー』のリメイクであるため、原作ファンからは一部、意見が分かれているのも事実です。
原作のすみれさんは、殺人未遂の裁判後、女性解放運動に大きく貢献した有名人になるなど、女性の人生の深さや重さがより強く描かれていました。
日本のリメイク版では、過去の重さの描写が原作に比べて弱いという意見や、ラストの1億円という巨額の遺産が「予定調和的」「ご都合主義が過ぎる」と感じる人もいます。
しかし、山田洋次監督は、原作の骨格を踏襲しつつ、戦争の歴史や在日朝鮮人との初恋のエピソードなど、日本の時代背景に巧みに置き換えて(ローカライズして)います。
この結果、「日本の家族映画」として、観客が求める感動的な結末へと導くという、山田監督らしい安心感が生まれているのです。
まとめ
■心を温める「人生の再始動」の物語
『TOKYOタクシー』は、タクシーという密室空間での会話劇を通じて、二つの異なる人生が交差するヒューマンドラマです。
この映画が観客に伝えるメッセージは、「人生は、たとえ後半戦でも方向を変えられる」ということではないでしょうか。
すみれさんは、過去の清算と人生の整理のために旅をし、浩二さんはその旅に付き添うことで、自身の抱える悩みや人生を静かに見つめ直すきっかけを得ます。
そして、最後に託された奇跡の贈り物が、浩二さんの人生の「再始動」を優しく後押しするのです。
派手なアクションも謎解きもありませんが、東京の美しい風景(柴又から横浜ベイブリッジまで)が映し出される中で、静かに、しかし深く、心の奥を揺さぶる力を持った作品です。
「最近ちょっと疲れてるな…」と感じる大人のあなたにこそ、ぜひ劇場で、この心温まる「大人のおとぎ話」を体験してほしいと思います。
この映画を観終えた後、あなたの人生のハンドルも、きっと少しだけ優しい方向に握り直せるはずですよ???
最後までお付き合いいただいてありがとうございました。
