映画『国宝』をご覧になった皆さん、こんにちは。
今回は、あの壮絶な物語の序盤で、喜久雄と共に運命を共にする重要な人物、徳次について掘り下げていきたいと思います。
「敵討ちのあと、徳次はどうなったの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
映画だけでは語りきれなかった彼のその後を、原作の視点も交えながら、詳しく解説していきますね。
一緒に『国宝』の世界をさらに深く探求していきましょう。
映画「国宝」喜久雄の「兄貴分」、早川徳次とは?
映画『国宝』の冒頭、ヤクザの新年会で喜久雄が歌舞伎を披露するシーンがありましたよね。
あの時、喜久雄の相手役として一緒に舞台に立っていたのが、早川徳次という少年です。
演じたのは下川恭平さんでしたね。
彼は喜久雄の幼馴染で、血のつながりはありませんが、まるで兄のように喜久雄を見守る存在でした。
映画では描かれていませんが、原作では喜久雄より2歳年上の「兄貴分」として、彼の人生に深く関わっていくことになる人物です。
映画「国宝」ネタバレ解説|徳次のその後、敵討ち後はどうなる?死亡?生きてる?
仇討ちのその後、徳次の運命は?
映画では、喜久雄の父親が抗争で亡くなった後、喜久雄と徳次が仇討ちに行く様子が描かれていますね。
喜久雄は「しくじった」と語りますが、この仇討ちの後、徳次がどうなったのか、映画だけでは少し分かりにくいですよね。
ある情報では、仇討ち自体は失敗に終わり、その際に徳次だけが収監されたと推察されています。
喜久雄が刃物を持ったのに対し、徳次が銃を持っていたという描写もあり、友人を巻き込んでしまった喜久雄の苦悩がうかがえる場面でもありました。
映画では、この後、徳次の登場は少年時代のみで、彼の人生がどのように展開したのかは語られません。
私も映画を観た時、あの頼れる徳ちゃんが、その後どうなったのかと、ずっと気になっていました。
しかし、原作小説では、彼の人生は映画以上に壮絶で、そして感動的なものとなるんですよ。
映画「国宝」原作小説で描かれる「もう一つの徳次の物語」
映画では語られなかった徳次のその後、実は原作小説では、彼が喜久雄の人生に寄り添い続ける重要な人物として描かれています。
彼は少年時代の仇討ちの後も、喜久雄のことを深く気にかけていました。
喜久雄の公演があるたびに、花や楽屋暖簾を贈り続け、陰ながら彼を見守っていたのです。
彼の存在は、喜久雄にとって「血の繋がらない兄」のような、最も信頼できる支えでした。
特に印象的なのは、喜久雄と芸妓・藤駒の間に生まれた娘、綾乃の物語に関わる彼の姿です。
原作では、綾乃が不良仲間と付き合い始めた際に、徳次が単身乗り込み、ヤクザたちを圧倒する場面が描かれています。
なんと彼は、綾乃を救うために自らの小指を詰めるという、任侠の世界で生きてきた彼らしい「筋の通し方」を見せるんですよ。
その後も、徳次は綾乃の様子を定期的に見守り、本好きだった彼の影響で、綾乃が出版社に勤めるきっかけを作ったりと、彼の献身は続きます。
喜久雄が周囲から孤立していく中でも、徳次は変わらず彼の傍にいる、無償の愛を捧げる存在だったのです。
しかし、原作の終盤では、親しい友である徳次がいなくなり、喜久雄は歌舞伎の世界で次第に孤立を深めていくことになります。
彼の死や行方についての直接的な描写は少ないものの、喜久雄の成功の影には、彼のような多くの人々の犠牲があったことが示唆されているんですね。
なぜ映画では徳次のその後が省略されたのか?
映画『国宝』は、上下巻合わせて800ページを超える大長編小説を約3時間の尺に凝縮しています。
そのため、原作に登場する多くの魅力的な人物やエピソードが、映画では割愛されたり、大幅に短縮されたりしています。
徳次の物語も、その一つだったのでしょう。
映画は、吉沢亮さん演じる喜久雄と、横浜流星さん演じる俊介の「血」と「芸」をめぐる対立と葛藤に焦点を当てることを優先したのだと思います。
彼らの壮絶な人生を鮮烈に描くためには、他のキャラクターの物語を深掘りする時間的な余裕がなかったのかもしれません。
個人的な感想としては、徳次の存在が映画でももっと深く描かれていれば、喜久雄の孤独感や、彼を支える人々の愛がより一層際立ち、物語にさらなる厚みが増しただろうと感じました。
特に、徳次が綾乃を救うために見せる任侠の「筋」は、喜久雄が歌舞伎の世界で「芸」を極める姿と対照的で、非常にドラマチックな場面だっただけに、映画で描かれなかったのは惜しいなと思います。
まとめ:徳次の存在が物語に与える深み
映画『国宝』における徳次の扱いは、作品の尺の制約からくる苦渋の選択だったと理解できます。
しかし、原作小説に触れることで、私たちは彼の揺るぎない忠誠心や、喜久雄への深い愛情、そして任侠の世界で培われた彼の「筋の通し方」を知ることができます。
彼が陰で支え続けたからこそ、喜久雄は「国宝」と呼ばれるまで芸を極めることができたのかもしれません。
映画の感動をさらに深めたい方は、ぜひ原作小説も手に取って、徳次をはじめとする多くの「名脇役」たちの物語を味わってみてください。
彼らの存在が、喜久雄の人生、そして歌舞伎の世界の「光と影」をより鮮やかに描き出していることに気づかされるはずです。