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ひゃくえむ(漫画)ネタバレ考察|最終回の最後の結末、トガシ・小宮どっち勝つ?

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アニメ・マンガ

アニメ映画『ひゃくえむ。』、ついに公開されましたね。

原作は『チ。―地球の運動について―』の作者である魚豊先生の連載デビュー作です。

たった10秒、100メートルという短い距離に人生を懸けるランナーたちの物語が、岩井澤健治監督の手により、圧倒的な映像体験としてスクリーンに刻み込まれました。

原作を読み込み、アニメの情報を追ってきたファンとして、この作品の魅力を深掘りしていきましょう。

きっとあなたの心にも、彼らの走る意味が深く刺さるはずです。

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ひゃくえむ(漫画)ネタバレ|あらすじ

■究極の青春ドラマ:あらすじ

物語は、小学生の主人公トガシが、100メートル走で全国1位に君臨する圧倒的な才能を持つ少年として始まります。

彼は「速く走ること」で居場所や友達、全てを手に入れてきた人間です。

そんなトガシが出会ったのが、転校生の小宮という少年でした。

小宮は現実から逃れたい一心で無我夢中に走り続け、トガシは彼に走り方を教えることになります。

鈍足だったはずの小宮は、トガシの指導と自身の狂気にも似た熱意により、その才能を徐々に開花させていきます。

二人はライバルであり親友とも言える関係を築きますが、小学生時代にトガシは小宮との勝負で初めて「敗北の恐怖」を知ることになるのです。

しかし、中学以降、トガシは自身の才能が衰えていることに気づき始めます。

一方、小宮は努力を重ね、日本短距離界のエースへと成長していくという、対照的な人生を辿ります。

人生のすべてを10秒に捧げた二人が、やがて迎える最後のレースに向けて再び走り出すというのが、この物語の大きな流れです。

ひゃくえむ(漫画)ネタバレ考察|最終回までのストーリー

■苦悩と再起:最終決戦までの展開

物語が面白く、そして哲学的に深まるのは、トガシが才能の限界と直面する高校生編から社会人編にかけてです。

トガシは高校時代に陸上を一度辞めようと悩みますが、廃部寸前の陸上部員たちの情熱に触れて復帰します。

しかし、高校のインターハイ決勝で、努力を重ねてきた小宮にあっけなく敗北を喫してしまいます。

その後10年間、トガシは企業の契約選手として陸上を続けますが、勝利への執着や走る意味を見失い、ギリギリの成績で日々を過ごしていました。

この社会人編で登場するキャラクターたちが、この作品の哲学性をさらに高めてくれます。

特に、万年2位でありながら15年もトップクラスで走り続けている海棠選手、そして絶対王者である財津選手の言葉は、胸に強く突き刺さる名言の宝庫です。

海棠が語った「何のために走るのかわかってりゃ現実なんていくらでも逃避できる」という言葉。

これは、不安症な自分自身をも試す感情だと捉える、彼独自の強烈な自己肯定の姿勢を示しています。

海棠の言葉や、怪我による契約打ち切りという厳しい現実に直面し、トガシはようやく「俺がまだ走りたいんだ!」という純粋な衝動に気づきます。

彼は誰かに認められるためではなく、本気でいるときの幸福感を味わうために、個人で日本陸上への出場を決意するのです。

予選・準決勝を勝ち進んだトガシは、日本短距離界のエースとなった小宮と、日本陸上の決勝という最高の舞台で三度目の直接対決を迎えます。

ひゃくえむ(漫画)ネタバレ考察|最終回の最後の結末、どっちが勝つ?

■読者に託された:最終回の結末

最終話で描かれる日本陸上の決勝戦は、トガシ、小宮、絶対王者・財津、そしてベテラン・海棠らが一同に会する、まさに究極の10秒間です。

決勝ではトガシがいいスタートを切り先行しますが、後半型の小宮がすぐに追いつき、互いに抜きつ抜かれつのデッドヒートが展開されます。

トガシは怪我の不安すら現実逃避し、全てを出し尽くして小宮を追い抜きますが、小宮もまた現実を引きはがし、再びギアを上げます。

もはや二人の死闘の舞台となった100メートル走の結末は、実況アナウンサーの「勝ったのは…!」というセリフで途切れ、勝敗は明確には描かれません。

なぜなら作者は、勝敗や結果以上に、彼らが全力を出し切って走り抜いたという事実そのものに、物語の結論を見出したからです。

勝敗の行方は読者に委ねられ、読者一人ひとりがそれぞれの解釈を持つことになります。

「記録としては小宮が勝っていたが、精神的な勝者は走る意味を見つけたトガシだった」という考察が、個人的には最も腑に落ちる解釈です。

最終的にトガシは、「どこにでもいる普通の人間だ。ただ一つ変わったことがあるとすれば、走るのが、好きだ」というシンプルな真理に辿り着きます。

勝ち負けの呪縛から解放され、彼らがゴールラインを越えた後に見せた表情は、長きにわたる葛藤から解放された、静かな「成仏」の瞬間だったように私には感じられました。

ひゃくえむ(漫画)|この作品のテーマ

■「命の輝き」を問う:この作品のテーマ

『ひゃくえむ。』の最も重要なテーマは、「何のために走るのか」という、人生における普遍的な問いかけです。

この作品は単なるスポーツ漫画ではなく、ランナーたちの内面や哲学を深く追求する、非常に哲学的な作品なのです。

主人公トガシは当初「100mだけ誰よりも速ければ全部解決する」という単純なルールを信じて走っていました。

しかし、才能の衰えや敗北、孤独を経験する中で、その信念が揺らぎます。

最終的に彼らがたどり着いた答えは、勝利や記録ではなく、「自分が走ることが好きだ」という純粋な衝動であり、「本気でいる瞬間の幸福感」でした。

原作者の魚豊先生は、短い人生の一瞬の輝きを切り取り、「命が輝く瞬間」を肯定する漫画を描きたかったと語っています。

たった10秒という極限の時間に、人生のすべてを凝縮させる狂気と情熱。

その短い距離の背景には、どれほどの時間と敗者の積み重ねがあるのか。

私たち観客や読者にも、「あなたは何のために走るのか?」「あなたの人生の10秒をどう生きるのか?」という重い問いが投げかけられています。

このアニメ映画は、ロトスコープによる生々しい走りの表現や、雨音と重なるピストル音といった最高級の音響によって、その哲学的なテーマを、まさに体感させてくれる傑作に仕上がっています。

特に学生時代にスポーツに打ち込んだ経験がある方や、今何か困難に立ち向かっている方には、彼らの生き様が深く共感できて、強烈な「自分も頑張ろう」という感情を与えてくれるでしょう。

まとめ

この作品は、競技漫画の枠を超えて、観る者の人生に静かに寄り添ってくれる「人生の100m」を描いた青春の記録なのです。

ぜひ劇場で、この極上の“アニメーション”を味わってください。

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