『タコピーの原罪』東くん徹底解説!真面目な彼が背負った「原罪」とは?
タイザン5先生の漫画『タコピーの原罪』。
毎週SNSを騒がせ、多くの読者を深く考えさせたこの作品に、僕もすっかり心を掴まれました。
愛憎渦巻く久世しずかと雲母坂まりなの物語が衝撃的だったのはもちろんですが、その裏でひっそりと、しかし確かな存在感を放っていたのが「東くん」こと東直樹ですよね。
今日は、そんな東くんについて深掘りしていきたいと思います。
彼のキャラクター設定から、読者の間で議論を呼んだ彼の「罪」、そして兄の潤也くんが自首したという噂の真相まで、僕なりに読み解いていきますね。
ぜひ、最後までお付き合いください。
タコピーの原罪ネタバレ考察|東くん(東直樹)とは?
■「東くん」ってどんな子?意外な一面と複雑な家庭環境
まず、東直樹くんの基本的なところから確認していきましょう。
彼は主人公の久世しずかちゃんや雲母坂まりなちゃんの同級生で、クラスでは学級委員長を務める優等生でした。
眼鏡をかけていて、真面目で勤勉。
成績も優秀だったから、多くの人は彼を「ちゃんとした子」だと思っていたでしょうね。
でも、彼の内面はそう単純じゃなかったんです。
実家は「あずまクリニック」を経営するお医者さん一家で、彼には要領が良くて何でもそつなくこなす高校生の兄、潤也くんがいました。
この兄と常に比較されて育ったことで、直樹くんは深い劣等感を抱えていたんですね。
お母さんからは「キミ」としか呼ばれず、名前すら呼んでもらえない。
期待もかけられなくなったという描写には、胸が締め付けられました。
彼が唯一、お母さんから自分のために与えられたという眼鏡も、実は度が合っていなかったんです。
これって、お母さんの支配を受けて、現実をちゃんと見れていなかった彼の状況を暗示しているようで、本当に切ない。
そんな彼にとって、いじめられているしずかちゃんを「助けたい」という気持ちは、単なる正義感だけではなかったんです。
むしろ、お母さんに認められたい、愛されたいという強い気持ちが、しずかちゃんに頼られたことで「自分は必要とされている」と感じる救いになったんです。
しずかちゃんにのめり込んでいく彼の姿は、彼の心の穴を埋めようとする必死な行動だったんだな、と感じました。
タコピーの原罪ネタバレ考察|東くん(東直樹)の罪は?
彼が背負った「原罪」の正体──それは“無自覚な加害”だった
さて、読者の間で特に議論を呼んだのが、東くんの「原罪」とは何だったのか、という問いです。
しずかちゃんを助けたいと願った彼が、なぜ物語の後半で“選択”を誤ってしまったのか。
彼の行動は、一見すると「しずかちゃんを救おうとした」「まりなちゃんに優しくした」という“善意”に見えますよね。
でも、その根底には、お母さんから得られない承認や、兄に劣る自分の存在価値を「弱者を救うこと」で満たしたいという、かなり複雑な動機が隠されていたと僕は思います。
特に印象的なのが、彼が「しずかには僕しかいないんだ」と言い放つシーンです。
この言葉、しずかちゃんのためを思っているように聞こえますが、実は彼の「自分が必要とされたい」という欲望の裏返しなんですよね。
しずかちゃんを「助ける対象」とすることで、自分自身の価値を保っていたという、少し歪んだ救世主願望があったのかもしれません。
そして、物語が大きく動いたのは、タコピーがまりなちゃんを撲殺してしまい、しずかちゃんが東くんを共犯に引きずり込んだ時です。
しずかちゃんに頼られた喜びから、彼はまりなちゃん殺害の隠蔽に加担してしまいます。
しずかちゃんの要求がエスカレートし、罪を被って一人で自首するように頼まれても、彼は断りきれませんでした。
僕が思うに、東くんの「原罪」は、悪意を持って誰かを傷つけたというよりも、「気づかずに、あるいは善意のフリをして他者を搾取する」という、無自覚な加害性にあったのではないでしょうか。
彼の行動は、完全に「善」とも「悪」とも断じきれない、まさに“グレーゾーン”に存在しているんですよね。
「よかれと思ってしたことが、実は相手を追い詰めていた」という現実の世界でも起こりうる典型を、彼は体現していたように感じます。
だからこそ、彼の行動は読者である僕たちの心にも深く刺さり、「自分もまた無自覚な加害者だったかもしれない」という、静かな罪悪感を芽生えさせるのかもしれません。
タコピーの原罪ネタバレ考察|東くん(東直樹)の兄が自首した理由はなぜ?
兄が身代わりに自首した?あの描写の真相は…
さて、東くんについて調べている読者の皆さんが気になるのが、「結局、お兄さんの潤也くんが直樹くんの身代わりに自首したの?」という疑問だと思います。
僕も読み進めていく中で、ここはすごく気になりました。
結論から言うと、作中で潤也くんが直樹くんの身代わりに自首したという明確な描写は、実はどこにもないんです。
これは、多くの読者が想像力を働かせて生まれた考察の一つなんですね。
作中の流れを見ると、まりなちゃんの死体遺棄の罪を一人で被って自首しようとした東くんを、兄の潤也くんが呼び止めています。
そして、潤也くんは直樹くんの相談を「親のように涙ながら全て聞いた」とあります。
その後、潤也くんは直樹くんを警察に相談するように促し、直樹くんもそれに従ったとされています。
つまり、直樹くん自身が警察に本当のことを話した、と考えるのが自然でしょう。
では、「クリニックが閉鎖したりする描写の意味が分からない」という声もありますが、これは直樹くんが罪を告白したことで、死体遺棄という罪に関わっていた息子がいるという状況を受け、お母さんがクリニックを一時休業したと解釈されています。
「あそこの病院の子、例の事件に関わってたんだって」という噂話も、直樹くんが関わっていたことを示唆していますよね。
しずかちゃんがすぐに捕まらなかったのは、タコ型宇宙人が実行犯だという小学生の証言がまともに取り合われなかったことや、しずかちゃんが東京へと旅立ったことなどが理由だと考えられます。
この物語における兄・潤也くんの役割は、直樹くんの「救済」そのものなんです。
潤也くんは、要領が良くて社交的で、母親の期待に応える完璧な兄として描かれがちですが、実は直樹くんの心の痛みに気づき、そっと寄り添ってくれる、本当に優しい存在でした。
読者からは「真のハッピー星人」なんて呼ばれているのも納得ですよね。
直樹くんの眼鏡が、母親に買ってもらった度が合わないものから、兄の潤也くんに買ってもらったものに変わった場面も印象的です。
これは、直樹くんが母親の呪縛から解放され、兄に導かれることで、ようやく現実と向き合い、「対話と理解」に基づいた新たな価値観を獲得できたことを象徴しているように感じます。
潤也くんから直樹くんへ、そしてタコピーへと繋がった「友情・想いの連鎖」が、最終的にしずかちゃんを救う「おはなし」へと繋がっていく。
この連鎖こそが、この作品が本当に伝えたかったことの一つなのだと僕は思います。
東くんの物語は、決して彼一人で完結するものではなく、周囲の人々、特に兄・潤也くんとの関係性の中で、複雑に変化し、成長していったんですね。
まとめ
『タコピーの原罪』という作品は、単なるSFや復讐劇ではありません。
機能不全に陥った家庭、親からのプレッシャー、そこから生まれる子どもの歪んだ感情、そして無自覚な加害性…。
これらは、現代社会を生きる僕たち誰しもが直面しうる、非常にリアルな“歪み”を鮮やかに映し出しています。
東くんというキャラクターを通して、作者が僕たちに問いかけたのは、「正しさとは何か?」「本当の救いとは何か?」ということだったのかもしれません。
彼は救世主になれなかったかもしれない。
でも、彼の不器用な優しさと、それでも誰かの痛みに寄り添おうとした彼の姿は、僕たち人間にしかできない“不完全だけど温かい救いの形”を示してくれたように感じます。
東くんの物語を読み終えた後、あなたの心に何が残ったでしょうか。
僕は、この作品の奥深さと、登場人物たちの葛藤に、改めて心を揺さぶられています。
ぜひ、もう一度、作品を読み返してみてくださいね。
きっと、新たな発見があるはずです。